CEOとCTOが退任

eVTOL業界の離陸はいつ? ヒョンデ設立のスタートアップ、Supernalが事業を一時停止

Munenori Taniguchi

Image:Supernal

2021年にヒョンデが設立したeVTOL開発スタートアップSupernalは、今年はじめに初の技術実証機の初飛行試験を行い、2028年には商用サービスを開始する予定だった。

だが、昨年末のワシントンD.C.本社閉鎖をはじめ、最近数か月の間に人員削減を実施している。さらに先週末にはCEOのジェイウォン・シン氏が退任を発表し、CTOのデビッド・マクブライド氏も時を同じくして退任したとの報道がなされており、決して事業は順調といえる状況ではない模様だ。Supernalは現在、事業を一時停止したと報じられている。Supernalはマクブライド氏退任について特にコメントしていないものの、TechCrunchに対して、新任の経営陣が今後の商用サービス展開に向けた最適なスケジュールを決めると述べた。

Supernalの広報担当者ベロニカ・グリゴリオウ氏は、ヒョンデがシン氏の後任として「世界の航空業界」から幅広い候補者を探していると述べている。なおLinkedInによれば、最高安全品質責任者(CQO)で、業界基準の遵守を徹底していたトレイシー・L・ラム氏も8月末に退職したという。

eVTOL、電動エアタクシーなどと呼ばれるこの新しい業界は、2~3年ほど前には続々とスタートアップが参入して盛り上がりを見せたが、その市場が確立する前に、淘汰が始まりつつあるように見える。たとえば、電動ダクテッドファン式のeVTOL開発で注目を集めた独Lilliumは、中国企業との提携で生き残りをかけていたが、資金が尽き、倒産してしまった。一方、Joby Aviationは先月、トヨタなどの支援を背景に、資金調達や業務提携・買収といった足場固めを続けている。

現在、暫定COOとしてSupernalを率いるのはデイビッド・ロットブラット氏だが、ヒョンデは「事業運営に関する深い専門知識を持つ新経営陣を任命し、アーバン・エア・モビリティ(UAM)ソリューションを推進するとともに、組織を次の成長段階へ導く予定」だとしている。

退任したCEOのシン氏は、今年はじめの試験飛行について、Supernalが「デモンストレーターで技術の限界に挑戦する」準備がほぼ整ったと述べていた。CTOのマクブライド氏は先月、試験飛行が2028年の商業打ち上げを目指すにあたり、「航空機製造能力の証明」になるだろうと語っていた。

ヒョンデ傘下のスタートアップ企業が苦境に陥るのはこれが2度目となる。2024年には、自動運転技術開発企業のMotionalが、出資パートナーからの資金提供が停止したせいで、全従業員の約40%を解雇し、大規模な組織再編を強いられた。

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