「俺の名は。」

マーク・ザッカーバーグ(本人)、マーク・ザッカーバーグCEOを訴える

Munenori Taniguchi

Image:Kathy Hutchins/Shutterstock.com

Facebook(現:Meta)の共同創業者マーク・ザッカーバーグ氏が、マーク・ザッカーバーグ氏から訴訟を起こされた。ザッカーバーグ氏の訴えによると、ザッカーバーグ氏は過去8年のあいだに、FacebookにアカウントとFacebookページを作るたびにザッカーバーグ氏から「ザッカーバーグ氏になりすましている」と主張され、その結果ザッカーバーグ氏のアカウントが5度もザッカーバーグ氏によって無効化されたという。

途中からわけがわからなくなった読者の方もいるだろう。要するにこれは、Metaのマーク・E(エリオット)・ザッカーバーグCEOが、同姓同名のマーク・S(スティーブン)・ザッカーバーグ氏から訴えられたという話だ。

インディアナ州で弁護士業を営むマーク・S・ザッカーバーグ氏は、自身の法律業務の宣伝や潜在的な顧客へのリーチとコミュニケーションをはかるために、ビジネス用Facebookページを作成している。ところが、Metaのモデレーションシステムによって、同氏のアカウントがマーク・E・ザッカーバーグCEOの名をかたる不届き者とたびたび判定され、これまで5度にわたって、Facebookページもろともアカウントが無効化される被害に遭っているのだという。

さらにその間、ザッカーバーグ弁護士は自身のFacebookページのプロモーションのために1.1万ドル以上の契約をした。だが、ページが削除されてしまったにもかかわらず、プロモーション費用だけが吸いこまれ続けているとし、これは契約違反だと地元メディアの取材に対して語った。

ザッカーバーグ弁護士は、この問題について「笑い事ではない」と怒り心頭だ。そして「高速道路脇にみえる看板のスペースを契約して、看板代を支払ったにもかかわらず、誰かがその看板に巨大な布団をかけて干すせいで、支払った金額に見合う恩恵が得られないようなものだ」と微妙な例えを用いて説明した。

ザッカーバーグCEOに比べれば、ザッカーバーグ弁護士はザッカーバーグとしての知名度で負けているかもしれない。しかし、ザッカーバーグ弁護士は破産処理の分野ではそれなりの実績を持つ人物として知られており、ときにはラスベガスで開かれる講演会のために呼ばれることもあるという。

だがそんな時も、迎えの運転手が「マーク・ザッカーバーグ」と記したボードを掲げて待っていたために、ザッカーバーグ弁護士の到着までに「あのマーク・ザッカーバーグが!」と勘違いした人が大勢集まってしまい、最終的に誰も知らないおじさんが出てきたのを見た群衆が大混乱に陥ったこともあるのだとか。本人にとっては笑い事ではないだろうが、もはや笑うことしかできない。

また、ザッカーバーグ弁護士によると、彼のもとには定期的にザッカーバーグ氏宛ての電話やメッセージが誤って届き、中には金銭の要求や殺害予告が送り付けられることもあるという。こちらのエピソードは確かに笑い事ではない。

こうした日常的な迷惑が続いているところに、上記のプロモーション費用までもが返金されず、一部がザッカーバーグCEOの懐に収まるのかと思ったとき、ザッカーバーグ弁護士は我慢の限界に達し、訴訟に踏み切ることにした。

そんなザッカーバーグ弁護士だが、唯一良かったと言えるのは、Googleに「Mark Zuckerberg bankruptcy(マーク・ザッカーバーグ 破産)」と検索ワードを指定すると、その検索結果の最上位に本人に関する情報が表示されることだという。

こうなったら、開き直って大々的に「マーク・ザッカーバーグ 破産」と記した広告バナーを作り、方々でそれを使って宣伝すれば、Facebookに吸われた費用も回収できるぐらいの効果はあるのではないかとも思える。とはいえ、さすがに弁護士という職業を考えると、それはできないのかもしれない。

ちなみにMetaは今年5月にザッカーバーグ弁護士のアカウントを無効化した件についてのみ、訴訟を起こされたことを受けて復元した。同社は声明で、「マーク・ザッカーバーグ氏のアカウントが誤って無効化されていたことが判明したため、アカウントを復元した」と述べている。

今後、ザッカーバーグ氏とザッカーバーグ氏の訴訟がどうなっていくのか、気になるところだ。

ちなみに、ザッカーバーグ弁護士は「iammarkzuckerberg.com」なるウェブページを公開し、そこでこれまでにザッカーバーグという名のせいでどんな目に遭ってきたかをつづっている。ザッカーバーグ弁護士にとっては冗談ではないかもしれないが、どうせならあと何人か同じような境遇のザッカーバーグ氏を集めてきて、ザッカーバーグ被害者の会を結成し集団訴訟を起こすところも見てみたいものだ。

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