禁止とルール整備・遵守の徹底、どちらが正しい?
なぜ? マイアミ沖の島で電動アシスト自転車が全面禁止に。1年前の一時的措置を恒久化

米国マイアミの沖合に浮かぶ島キービスケーンの議会は、島内での電動アシスト自転車の使用を全面的に禁止することを決定した。これは、1年半ほど前に一時的公共安全対策として採用した措置を恒久化するものだ。
キービスケーンが属するフロリダ州では、ほとんどの公共の自転車道で電動アシスト自転車の使用が許可されている。だが、キービスケーンだけが老若男女、年齢、性別、走行速度レベル、地元民か観光客かに関わりなく、すべての電動アシスト自転車の使用を禁止することになった。
事の発端は2024年2月14日、日も暮れて暗くなった時間帯に、66歳の家庭教師が乗る自転車と、サッカーの練習に向かって急いでいた12歳の少女が乗る電動アシスト自転車が衝突する事故が発生したこと。家庭教師は事故発生の際にヘルメットを着用しておらず、ライトがなかった。一方、少女の自転車はライトが取り付けられていたが、それが点灯していたかどうかははっきりしなかった。また、事故発生まで少女は家庭教師の乗る自転車が見えなかったと述べた。
死者が出たのは痛ましいことだったが、警察はこの件に事件性はないと判断し、単なる事故として処理した。だが、地元議会はこの事故を重く受け止め、事故から2日後に緊急措置として、島内でのすべての電動アシスト自転車の使用を一時的に禁止した。
事故後、一見厳しすぎるとも思える措置がすぐに取られたのには他の理由もある。というのも、この島では長らく、ティーンや一部の大人が電動アシスト自転車に乗り、車道の制限速度が20mphの場所を30mph(約50km/h)近い速度で走行することが問題視されていたからだ。
このような車両は一時停止を無視したり、走行区分を無視して逆走するなど、もはや無法状態だと訴え、しかるべき法規制を求める声も一部住民からあがっていた。そのため議会は、事故後に批判の声が高まる兆候を見て、すぐに電動アシスト自転車の全面禁止措置を発表。この緊急措置は2024年に延長され、今回、議会で全面禁止恒久化の案が採用される流れとなった。
だが、別の多くの住民は事故後から、自動車の代替交通手段として米国内で最も急成長しているマイクロモビリティの利用を禁止する議会の決定に反対する声をあげている。ある子どもを持つ親は、子どもが電動アシスト自転車を使うことで、親が車で送迎する必要がなくなり、(自動車が減ることで)道路の混雑も軽減されると主張している。
この禁止措置は適用範囲が広すぎるため、持続可能でアクセスしやすい交通手段として電動アシスト自転車を使うべきだと考える責任ある大人世代や、観光客、通勤者を不当に罰するものだと主張する人も多い。地元警察署長も、全面禁止は行き過ぎだとして、未成年者の利用を制限しつつも、大人が責任ある運転を認める、よりバランスの取れた政策を採用すべきとして、禁止措置の緩和を提案した(ただ、この提案は村議会投票で4:3で却下された)。
日本と米国の交通事情には大きな違いがあるので、我々日本人からはどちらの主張がより筋が通っているのかの判断はできない。ただ、米国における一般的な電動アシスト自転車はアシスト量も速度も日本より高く、ちょっとした不注意が重大な事故につながる可能性も高まる。
また、事故を起こした電動アシスト自転車の種類は、当時の報道の写真から判断するに、ペダルを漕がずにモーター出力だけで高速走行できるモードを備える、本来ならモペットと呼ばれるべきタイプのものであるようだ。
とはいえ、キービスケーンの今回の規制は米国全体では特異な例である。今後の安全対策の方向性としてどうなっていくのかが気になるところだ。