やり過ぎ気味

30kg背負って10km以上歩ける新型ロボット犬「Unitree A2 Stellar Hunter」

Munenori Taniguchi

Image:Unitree

中国Unitreeは、四足歩行ロボット犬の新製品A2 Stellar Hunterを発表した。

同社のロボット犬としては、これまでにも消費者向けバージョンもあるGo 2などが販売されている。今回のA2は、外観的にはほとんど変わらないように見え、新鮮味はそれほどない。

…と思って油断していると、Unitreeが公開した紹介動画でいきなりガラスを突き破って飛び出してくる、元気良すぎなA2の姿に思わず面食らってしまうだろう。

おいおい大丈夫かと思っていると、A2は矢継ぎ早にバク転、転回、片足旋回、逆立ち旋回、チンチン回し(非常に不適切な呼び方な気もするが、後ろ脚2本で立つチンチンの姿勢で回転するという、何と呼べば良いのか分からない動き)、1本足逆立ちで回転といった謎な動作を、謎の洞窟で披露してくれる。

一転して、採石場のような場所では最高速5m/s(18km/h)の駆け足を見せ、また謎の洞窟に戻って駆け足のまま高さ60~70cmほどの段差や瓦礫の斜面を蹴躓きながらも駆け下りる姿を見ることができる。

このあたりからA2の動きがだんだんゴキブリじみて見えるような錯覚に苛まれるが、その運動能力、走破性の高さには脱帽しかない。5~6年程前の四足歩行ロボットにはできなかった芸当ではないだろうか。

しかし、A2が真価は発揮するのはここからだ。その強靱な足腰を証明するかのように、大人の男がA2の背中にサーフィンでもするかのように乗り、飛び跳ねてもしっかりと大地に足を付けて立っている姿が映し出される。男性の体重がテロップどおり100kgもあるかは正直疑問だが、それでも充分にA2が力強いことがわかる。 

その後の何カットかは、つなぎの絵で若干ダレるが、最後に30kgのバーベル用ウェイトを背負って3時間8分、12.55kmをバッテリー交換なしで踏破するのを見ると、そのバッテリーの持ちの良さに驚かされる。なお、A2の左脇腹にある2つの直方体がバッテリーパック。また仕様上は、連続運搬可能な質量は25kgとされている点には注意が必要だ。

A2には9000mAhのバッテリーパックが2つ搭載され、積載物がない状態で最大5時間(または20km)、積載可能重量いっぱいまで背負った状態では約3時間の歩行が可能とのことだ。2個のバッテリーパックは1つずつのホットスワップに対応しているため、連続で稼働させ続けることも可能。歩行時の最高速度は上に述べたとおりだが、足首をホイールに交換することもできる模様だ。

素早い移動に不可欠な周囲環境の把握のために、全方位・奥行きまで認識できる超広角の産業用LiDARを前方と後方にそれぞれ1基ずつ搭載。フロントはライト付きのカメラ映像をAIビジョンシステムと8コアプロセッサが処理し、自律的に障害物を回避可能。「死角を排除」して動作するという。質量はバッテリー込みで37kg。

通信機能にはWi-Fi 6とBluetooth 5.2を搭載、オプションで4GとGPSも装備でき、OTAソフトウェアアップデートに対応する。オンボードスピーカーとマイクアレイも搭載されており、必要な場合には遠隔のオペレーターと周囲の人とで音声コミュニケーションも可能な模様だ。

Image:Unitree

Unitree A2は一般向けの製品ではなく、工場や発電所などの環境における現場の点検検査や、物流業務、研究開発など、主に産業・研究用として設計されている。そのため、標準価格の設定はない。

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