ポケットペア側は「動く標的」戦略を展開
『パルワールド』訴えた任天堂が苦戦中? 訴訟中に特許の文言を修正

任天堂および株式会社ポケモンは、同社の『ポケットモンスター』シリーズを想起させる人気ゲーム『Palworld(パルワールド)』を開発したポケットペアを、2023年9月に特許権侵害を理由として提訴した。この訴訟は日本国内で提起されたものであり、現在も継続中である。
一般に「最強」とも評される任天堂の法務部であるが、今回は苦戦を強いられているようだ。ゲーム業界の訴訟やIP関連に詳しいメディア「Games Fray」によれば、任天堂は訴訟の過程で一部の特許内容を修正するなど、さまざまな手段を講じているという。
今回の訴訟で根拠とされているのは、以下の3件の日本特許である。
- モンスターなどの「捕獲」メカニズム(特許第7545191号)
- 捕獲に関連する追加的な技術(詳細は非公開/特許第7493117号)
- キャラクターが乗り物や生物にシームレスに乗り換える「ライド切り替え」(特許第7528390号)
これらはいずれも、2021年末に出願されたオリジナル特許の分割出願であり、『Palworld』リリース後の2024年に登録された。これらの特許は、訴訟を想定して意図的に準備されたものと見られている。
一方のポケットペアは、特許侵害を回避する目的で、ゲーム内の仕様を随時変更する「動く標的」戦略を採っている。この対応により、任天堂側は「どの時点のどの仕様が特許侵害に該当するのか」を特定しづらくなっており、損害賠償の算定根拠の確立も困難になっている。
そうした中で任天堂は、日本特許庁に対し「ライド切り替え」など一部の特許に関する請求項の修正を申請し、承認された。技術的な内容には変更がないとされているが、請求項にはこれまでにない奇妙な表現が含まれており、文章全体が極めて冗長かつ複雑になっている。
こうした中途での請求項修正は、前例がないわけではない。しかし通常は、元の特許に無効リスクが存在すると当事者が認識している場合に採られる「苦肉の策」であると指摘されている。
さらに任天堂は、米国内においてポケットペアを提訴する法的根拠を見いだせていない。同社は日本で取得した一部の特許を、後から米国でも出願しているが、米国特許商標庁(USPTO)に捕獲システムなどについて「構成に新規性がなく、技術的進歩も認められない」として拒絶されている。
なお、任天堂はあくまでも主眼を「特許権の侵害」に置いており、キャラクターデザインなどについては争っていない。そもそも著作権侵害を主張することは困難であると判断しているようだ。
これまで任天堂は、国内外を問わずIP・著作権・特許に関する訴訟において高い勝訴実績を誇ってきた。とはいえ、今回は訴訟の根拠となる特許自体に新規性や進歩性が認められにくく、総合的に見ても訴訟の維持や勝訴はたやすくなさそうだ。
- Source: Games Fray