主に要約機能を多用
議事録の作成時間が「6分の1」に。建設現場で活用されるAI文字起こし、Nottaを導入した弘電社の工夫とは

テープ起こしアプリを提供する「Notta」(ノッタ)は、法人向けの導入事例として、電気設備工事などを行っている弘電社との取り組みをメディア向けに紹介。弘電社の担当者もプレゼンを行い、どういった理由でNottaを採用し、どのように活用しているかを説明した。
Nottaとは、AIを利用して58言語の文字起こしができ、さらにAIを使った要約まで行えるサービス。iOS/Android用のアプリだけではなく、PC等からブラウザで利用できるWeb版も提供している。また追加料金が発生するアドオンとして、リアルタイム翻訳や2か国語の文字起こし・翻訳も可能だ。
なお、利用料金は個人向けのプレミアムで月額2200円、チームの共同作業向けのビジネスで月額4180円、企業に合わせたカスタマイズに対応するエンタープライズの3種類を用意している(価格は税込)。月120分/連続3分までに制限された、無料のフリープランも用意されている。

文字起こしが行えるサービスは他にもあるが、Nottaが強みと説明しているのが、オフラインからオンラインの会議まで、様々な場面での文字起こしに対応しているという点だ。直近では、スマートフォン不要で録音できるハードウェアとして、カード型の「Notta Memo」とイヤホン型の「Zenchord 1」も新たに発表している。

Nottaはもともとコンシューマー向けのツールだったが、徐々に利用範囲が広がってきており、現在はビジネス向けにも力を入れているという。登録ユーザーは全世界で1000万人、日本国内で230万人。企業においては、日経225銘柄のうち73%に登録ユーザーがいるそうだ。

ではビジネスにおいて、Nottaはどのように活用されているのだろうか。業種として一番使われているのが病院・医療・福祉(7.12%)で、それに続くのが建築・建設・土木(6.85%)。3位はコンピューターソフトウェア(4.87%)、4位は教育関連・学習支援(3.93%)、5位は人材・派遣サービス(3.37%)となっている。

そのうち、今回プレゼンを行った弘電社は、建築に関わる企業だ。同社がNottaの存在を知ったのは、2023年6月の展示会とのこと。DX化を進めるにあたり、当時検討していた7社ほどのAI議事録サービスから、最終的にNottaを選ぶことを決めたそうだ。
弘電社では社内外の定例会議が多く、社員一人で会議を担当しなければならない現場もある。会議ごとに議事録を作成しなければならないが、一人現場ではICレコーダーの録音から議事録を作成する必要もあり、それが残業の一因でもあったという。
その解決策として導入したのがNottaの文字起こしサービスだそうだ。現在はエンタープライズプランで60名のライセンスを登録しているが、近々90名まで増やす予定があるという。文字起こしした録音の合計時間は月間8000分ほど。全社員にライセンス付与するのではなく、議事録作成を担う担当者や、事務所を構えている現場から導入を進めているとのこと。
弘電社がNottaを導入した大きな理由が、同社が各DXサービスのデータを集約させている「Autodesk Construction Cloud」に対応しているという点。これは導入前にNotta側に相談し、対応してもらったと話していた。

プレゼンを行った弘電社の技術戦略・イノベーション本部 技術戦略部 兼 設備設計部 浦見成一氏は、Nottaで議事録を作成する際のポイントとして、「会議のやり方をNottaに合わせる」ことが重要だと話す。たとえば、「お題1始めます」「次の議題始めます」などを意図的に話すことで、Nottaで要約する際のサポートになるという。
浦見氏はNottaの導入によって、議事録の作成時間を「6分の1」に短縮できたと話す。一方で活用拡大の障壁になっているというのが、「議事録はスキル」という価値観をベテランの社員が持っていること。それでも、文字起こし部分をNottaに置き換えるだけで時短になるため、新しいものが好きな社員からの口コミ効果を利用したり、実際の会議でデモを行ったりして、そのメリットの周知を図っているという。

一方で、特殊な言葉や略語も多く使っているため、文字起こしの精度は6割に留まるという。ユーザー辞書もあるが、個々人で登録すると管理が煩雑になるため、まだ運用は決められていないという。そのため、現在は要約機能に重きを置いているとのことだ。
現状ではICレコーダーで録音したものを都度Nottaに取り込んでいるため、ワークフローの改善を検討中だという。だが、iPhoneからアプリを立ち上げて使うと、電話がかかってきた際に文字起こしが止まってしまう問題もあり、これからも最適を模索していくそうだ。
Nottaは「AIを使って会話から価値を生み出すこと」をミッションとしており、10年間にわたって技術で “会話を資産化” することに取り組んできたとのこと。今後はAIチャットから会話や議事録などの蓄積データを横断して検索し、 “立体的に会話をつなげる” ことを目指していくという。AIの進化にともない機能を拡充し続けるNotta。今後のアップデートと活用の広がりに注目したい。