トランプ関税と製造の両面でチャイナリスク
iPhone 17、インドと中国で同時生産へ。中国政府はエンジニア引き上げで妨害か

アップルは中国による妨害工作に直面しつつも、「iPhone 17」シリーズのインドと中国での同時生産を開始する計画を進めていると報じられている。特に、インドで中国と同時に組立を開始することは、製造拠点としての中国への依存度を下げるというアップルの長年の目標において、重要な節目となる。
これまでiPhoneの大半は中国で製造されてきたが、アップルはインドを第2の製造拠点と位置づけており、2027年までに全体の50%をインドで生産することを目指しているとされる。ただし、現時点ではその比率は20%未満にとどまっているようだ。
インドと中国の両方で同時に最新iPhoneの製造を開始することは、インドの量産体制確立における重要なマイルストーンである。インドの経済紙「Economic Times」によれば、前モデルiPhone 16ではインドでの組立開始が中国より数週間遅れたが、今回は同時スタートを目指しているという。
このため主要製造パートナーであるFoxconnは、すでにインド国内で準備を本格化させており、中国から部品を輸入して「試験生産(トライアルプロダクション)」を開始したとされる。税関データによれば、先月にはディスプレイ、カバーガラス、筐体、カメラモジュールなどの主要部品がすでにインドに到着しているとのこと。
試験生産は、組立ラインにおける不具合や製造上の問題を洗い出し、修正するための最終工程である。通常、発売の約2カ月前、つまり今頃に実施され、その後は8月から本格的な量産に入り、9月の発売に向けて在庫を積み上げる見通しだ。
アップルとしては、米中関係の悪化に伴う関税リスクを見据え、インドのみでアメリカ市場向けの全iPhoneをまかなえるような体制の確立を視野に入れているようだ。
一方で、Bloombergは中国政府がこのインドへのシフトに対し不満を強めており、妨害工作として3つの手段を講じていると報じている。その1つが、中国人エンジニアをインドから引き上げる措置である。
報道によると、約300人以上の中国人スタッフがすでに帰国し、インド工場には主に台湾人スタッフが残されているという。このような大規模な人員移動は約2か月前から始まっており、表向きの理由は明かされていないが、中国当局が技術移転や熟練労働者の国外流出を防ぐ目的で規制を強化していることが背景にあるとみられている。
この影響により、iPhone 17のインド生産立ち上げや現地スタッフの教育、技術移転のペースに遅れが生じる懸念がある。製品の品質に大きな支障はないと見られるが、生産効率や組立スピードの一時的な低下は避けられない可能性がある。
アップルは、これまで長年にわたり中国人エンジニアの育成に力を注いできた経緯があるだけに、こうした人材はインドにおける製造拠点拡充、特に最新iPhoneモデルの生産において極めて重要な存在である。しかしながら、彼らは中国にルーツを持ち、家族も中国国内に残しているケースが多いため、その意味でも「チャイナリスク」が表面化しているといえる。
- Source: Economic Times
- via: Bloomberg