PS5移植版も含めれば黒字とのこと

Xbox Game Passは本当に黒字?「マイクロソフトの無限のカネ」に支えられたモデルに疑念

多根清史

Image:Eric Broder Van Dyke/Shutterstock.com

マイクロソフトは、Xbox Game Passの収益性や成長性を繰り返し強調してきた。しかし最近、疑問が活発化している。とくに重視されているのが、自社開発ゲームのコストや売上減少が、Game Pass全体の収益に与える影響である。

こうした中、ファーストパーティタイトルの売上減少を考慮してもGame Passは依然として黒字だと、ゲーム業界の識者が主張している。

ゲームビジネスメディア、The Game Business編集長のChristopher Dring氏は、当初「ファーストパーティゲームのコストは計算に含まれていない」と発言していた。つまり、『Starfield』や『インディ・ジョーンズ 大いなる円環』といった超大作の開発費を差し引けば、Game Passは実際には赤字である可能性が示唆されていたことになる。

しかしその後、同氏は「情報筋から連絡があった」として、「ファーストパーティの売上損失(販売本数やマイクロトランザクションの逸失収益)を含めても、Game Passは黒字である」と発言を修正した。

ただし、「ファーストパーティタイトルの開発費そのものは、Game PassのP&L(損益計算書)には含まれていない」とも明言している。開発費はDLCや他プラットフォームでの販売、マイクロトランザクション(バトルパスやスキンパックなど)で回収できるという理屈である。

Dring氏の発言で注目すべきは、この計算式における「PS5移植版」の重要性である。

たとえば今年4月には、『Oblivion Remastered』がPS5で最も売れたゲームとなり、『Minecraft』『Forza Horizon 5』『インディ・ジョーンズ』といったファーストパーティ作品がそれに続いた。Xboxのファーストパーティタイトルは、すでにPS5での売上を前提としたビジネスモデルへと移行しているようだ。

だが、Game Passが仮に黒字であったとしても、「持続不可能なモデル」「業界全体に悪影響を与えている」との批判は根強い。

Arkaneの共同設立者であるRaphael Colantonio氏は「(マイクロソフトの) “無限のお金” によって補助されながら、10年間にわたり業界へダメージを与え続けてきたが、ある時点で現実を突きつけなければならない」と警鐘を鳴らしている。Larian Studiosのパブリッシング責任者、Michael Douse氏もこれに同意し、「その資金が尽きたとき、どうなるのか」と問いかけている。

現実に、マイクロソフトは数千人規模のレイオフを実施し、Rareの『Everwild』、Zenimaxの未発表MMO、The Initiativeによる『Perfect Dark』リブートなど、複数のプロジェクトが中止に追い込まれた。Game Passが黒字であったとしても、そのしわ寄せはすでに現実として現れている可能性が高い。

Colantonio氏は「オファーが良すぎるがゆえに、ゲーマーには歓迎されている。だが最終的にゲームそのものへの悪影響が理解されれば、ゲーマーでさえ嫌うようになるだろう」と述べている

日本ではGame Passの認知度は高くないが、それでもXboxタイトルは他社のプラットフォームも含め、一定の存在感を持っている。その影響はやがてPS5やNintendo Switch 2といった他陣営にも波及し、決して「対岸の火事」では済まされない日が来るかもしれない。

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