Galaxyスマホに自社製チップ採用を広げる見通し

Pixel 10搭載の「Tensor G5」チップ受注はTSMC、サムスンは「Google事件」に衝撃か

多根清史

Image:dennizn/Shutterstock.com

Googleは、次期Pixel 10シリーズに搭載される「Tensor G5」チップの製造委託先を、従来のサムスンからTSMCへ切り替えたと見られている。この動きはサムスンにとって「衝撃」であり、同社のファウンドリ(半導体受託製造)事業にとって深刻な警鐘となっていると報じられている。

これまで数年間にわたり、Pixelスマートフォン向けのTensorチップは一貫してサムスンが製造を担当してきた。過去のTensorチップはすべてサムスンのExynos設計をベースとしており、現行のTensor G4もExynos 2400の10コア構成から8コアにカスタマイズされたものである。製造プロセスもExynos 2400と同じく、サムスンの第2世代4nmプロセス(4LPP+)を採用している。

しかし、Tensor G5では、Googleが初めて完全な独自設計に移行し、製造プロセスもTSMCの3nmノードへと変更される見通しだ。

韓国の経済メディア「The Elec」によると、この「Google事件」を受け、サムスンは緊急のグローバル戦略会議を開催し、ファウンドリ部門の強化と問題点の洗い出しに乗り出したという。業界関係者は「今回の事例は、ファウンドリ部門における複数の構造的問題が一度に表面化した象徴的な事例だ」と述べ、社内でも多くの懸念と議論が交わされていると伝えられている。

実際、サムスンのファウンドリは5nm以下の先端プロセスでTSMCとの技術格差が広がっており、市場シェアも縮小傾向にある。2025年第1四半期時点でのシェアはわずか7.7%に留まっている。

GoogleがTSMCへの乗り換えに踏み切った理由としては、サムスンの3nm世代での歩留まりの悪化、半導体設計リソースの不足、さらにソフトウェア開発面での限界があったとされている。

ほか、Googleはスマートフォン市場でサムスンと直接競合する立場にあることも背景にある。過去にアップルも同様の事情から、かつて委託していたチップ製造をサムスンからTSMCへと移行させていた。

なお、Googleに限らず、近年ではクアルコムやNVIDIAといった他の大手顧客もTSMCへの切り替えを進めており、サムスンの先端製造ラインにおける稼働率は低下傾向にあると報じられている。

こうした中、サムスンは自社製スマートフォンへの自社製チップ採用を加速している。今年夏に登場予定の「Galaxy Z Flip7」は、米国市場を含むすべての地域で、サムスン製のExynos 2500チップを採用する見込みである。さらに2026年には、次世代フラグシップ「Galaxy S26」シリーズで、2nmプロセス製造によるExynos 2600の搭載が計画されているとされる

もっとも、これらの製品が成功を収めれば、TSMC依存の大手顧客を獲得するチャンスになるとの見方もある。

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