表面上は友好関係を強調
OpenAI、マイクロソフトを独禁法違反で提訴検討との報道

OpenAIの幹部らが、最大の出資者であるマイクロソフトに対し、米国の規制当局へ反トラスト法(独占禁止法)違反での申し立てを検討していると、米『The Wall Street Journal』が報じている。この動きは、長年にわたりAI分野で協力関係にあった両社の緊張が劇的に高まっていることを示すものだ。
この問題に詳しい関係者は、この申し立てを「核オプション」と表現し、マイクロソフトがクラウドサービス分野での支配的地位と契約上の優位性を利用して競争を阻害していると主張する可能性が高いと述べている。
両社のパートナーシップは、2019年にマイクロソフトがOpenAIに10億ドルを投資したことに始まる。その後も数十億ドル規模の追加投資が行われ、マイクロソフトはその見返りとして、Azureクラウド上でOpenAIモデルを独占的にホストする権利を得てきた。
両社の摩擦の中心には、OpenAIが非営利モデルから公益法人(PBC=Public Benefit Corporation)への移行を目指していることがある。
この再編にはマイクロソフトの同意が必要だが、両社は数か月にわたり交渉を続けているものの、持ち株比率や利益配分についての合意に至っていないという。OpenAI側は、将来の利益を放棄する代わりにマイクロソフトの持ち株比率を33%に制限し、Azureにおける独占ホスト契約条項の変更も求めているとされる。
この再編構想に対しては、かねてより多くの批判が寄せられていた。たとえばイーロン・マスク氏やマーク・ザッカーバーグ氏は強く反対しており、50以上の団体が署名した嘆願書がカリフォルニア州の司法長官に提出されていた。
特にマスク氏は、OpenAIが「公共の利益よりも営利を優先し、契約違反を犯した」と主張して訴訟を起こしており、Meta(旧Facebook)も同様に、州当局に対して営利企業化の阻止を要請している。
一方でOpenAIも、マイクロソフトへの依存を減らす動きを強めている。今年初めには、オラクルおよびソフトバンクと連携した大規模AI開発構想「Stargate Project」を発表し、さらにGoogleともクラウド契約を結ぶなど、競合関係を超えた連携も進めている。
ただし、表向きには両社は協力関係を維持している。マイクロソフトとOpenAIは米Reutersに対し、「長期的かつ生産的なパートナーシップを維持し、今後も協力していくことに楽観的である」とする共同声明を発表している。今後の両社の動向が、AI業界全体の構図に与える影響を引き続き注視したい。
- Source: The Wall Street Journal
- via: Ars Technica