AIで「商品を適切かつ心に響くタイミングで届けられる」

アリババの越境ECアプリ「TAO」。AI導入で目指す「ECの再定義」

編集部:平山洸太

TAOのAIエージェント導入にともない発表会が開催された

アリババグループが運営する越境ECアプリ「TAO」は、AIを用いてファッションコーディネートを行える新機能を発表。「これまでにない新しいファッションEC体験」を提供できるとアピールしている。

TAOは昨年10月にリリースされた、日本市場向けの越境ECアプリ。アリババ傘下のAlibaba International Digital Commerce Groupが運営しており、ファッションからアウトドア、インテリア、ペット用品まで購入できる。

TAOで取り扱われているアイテムの一例

このうちファッションアイテムは500万点以上が用意され、毎日1万点の新商品が追加されているとのこと。この裏には、同社が中国で展開しているECサイト「タオバオ(淘宝)」の1億点を超える取り扱いがあり、そこから日本向けに厳選したものをTAOに投入している。

また、TAOは日本向けに展開されているアプリであり、タオバオから商品を厳選して投入する際にも、日本人の好みやファッショントレンド、日本人の求める品質などを満たすものを3段階で選別しているという。アプリのUIは日本のWeb/UIデザイナー 田中良治氏を起用するほか、配送ではヤマト運輸や佐川急便、決済ではPayPayやJCBと連携するなど、日本に合わせたローカライズを行っている。

TAOアプリの様子

そして大きな特徴が、AIを積極的に取り入れていくという点。これはローンチ当初から念頭に入れていたようで、UIをデザインした田中氏も、「究極的にはUI専門家は不要になってユーザーの好みに応じて生成されていくことになると思う」と前置きし、そのための土台として「できるだけベーシックにして、装飾のない」デザインを採用したことを説明している。

今回の新機能「AIエージェント」では、アリババの最新AI「Qwen(キューウェン)」を活用。同社のTAOプラットフォーム運営責任者である何玫(カ マイ)氏は、AI時代のECは「新たな価値をユーザーにもたらす必要」があり、もはやECは買い物だけのものではないと話す。その中でTAOはAI導入によって「ECに対して再定義をしようとしている」とのことだ。

新たに「Qwen」を搭載

TAOのAIは3つのエージェントを用意。最適なコーディネートを提案する「スタイリングマスター」、日常生活を便利にするヒントを提供する「暮らしのアシスタント」、趣味や感性を刺激するアイデアを届ける「趣味マスター」が展開されている。

スタイリングマスターは、1万以上のスタイルやトレンドを網羅しており、専門的かつ精度の高い提案が行えるとのこと。ファッショントレンド用語の解説や、1か月のコーディネートカレンダーの作成もこなすことができる。また、暮らしのアシスタントや趣味マスターによるライフスタイル提案は、ホーム美学、飲食、アウトドア、旅行、文化・クリエイティブなど100以上のライフスタイルや趣味をカバーしているとする。

写真撮影したファッションアイテムをもとに、ストアから製品を探せる

これらによって具体的に何ができるかというと、たとえば好みのファッションアイテムを撮影すれば、その魅力や着こなしのポイントの解説を受けられる。また、チャット形式による旅行のプランニングから必要なアイテムのサポート、理想とする空間デザインのコーディネートを提案させることも可能。検索システムにもAIが組み込まれ、ユーザーの好みにあったアイテムを提案できるという。

何氏は、AIを使用することで「ニーズを予測でき、ユーザーが自ら検索して取引することを後押しできる」と説明する。さらに、「商品やサービスを適切かつ心に響くタイミングで届けることが可能」とまで話し、TAOのAI導入によるプラットフォームの成長に自信を見せた。