トランプ関税も逆に追い風に?

Netflix、時価総額1兆ドルをめざし「5年にわたり値上げ」の可能性

Image:Hamara/Shutterstock.com

Netflixが2030年までに「時価総額1兆ドル」と「収益の倍増」という2つの野心的な目標を掲げていると、The Wall Street Journalが報じている。

まず、Netflixは現在の時価総額約479億ドルから、今後5年以内に1兆ドルへの倍増を目指しているという。同社の経営陣は、ストリーミング市場には依然として成長余地が大きいと判断しているようだ。ただし、1兆ドルという水準は、アップルやマイクロソフトなど世界でも限られた企業のみが達成している水準である。

この目標達成の手段として挙げられているのが、売上高を昨年の約100億ドルから5年で2倍にすることである。

売上高を倍増させる手段はいくつか考えられる。たとえば、顧客基盤や広告事業の拡大、新規市場の開拓、さらにはゲーム配信などが挙げられる。とはいえ、最も即効性があるのは、定期的な価格引き上げであると見られている。

Netflixは近年、ゲーム事業に注力してきたが、2022年夏時点でプレイ率は1%未満にとどまり、ゲームを1本も出さないままAAAスタジオを閉鎖したこともある。現状では、ゲーム事業が売上の柱になる見込みは薄い。

また同社は、2024年末時点での加入者数を3億人、そして2029年までに4億1000万人へと拡大することを目指しているという。これは約1.4倍の成長に相当するが、価格が据え置きであれば売上を2倍にするには不十分である。

実際、Netflixは2015年から2025年の10年間で、米国のプレミアムプランの月額料金を11.99ドルから24.99ドルまで引き上げている。今年初めには、広告なしスタンダードプランが15.49ドルから17.99ドルに、広告付きスタンダードが6.99ドルから7.99ドルに値上げされた。なお、日本では2015年9月のサービス開始時、プレミアムプランは月額1450円(税込)だったが、4度の値上げを経て、現在では2290円となっている。

トランプ大統領が高関税政策を発表する直前の3月、Netflix幹部らは会議において米国経済が後退する可能性を認めていたという。それでも、人々が映画館や外食に出かけるのではなく、家に留まり映像コンテンツを楽しむなら、ストリーミングへの影響は少ないと予想したとのことだ。

新型コロナ禍においては、外出自粛により外食産業や小売業が大きな打撃を受けた一方で、巣ごもり需要に支えられた動画ストリーミング市場は急成長を遂げた。NetflixやDisney+を含む大手サービスも、この機に大きな拡大を果たした。今後、景気の冷却要因となりうるトランプ関税が、逆にNetflixにとって追い風となるのかもしれない。

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