ただし、申請書類に不備があった可能性も

「GPT-4.5」開発の研究者、グリーンカード発給拒否され米国から強制退去

Image:ioda/Shutterstock

「GPT-4.5」の開発に重要な役割を果たしたというOpenAIの研究者、カイ・チェン氏は金曜日、グリーンカード(永住権カード)の申請が却下され米国からの即時退去を命じられた。チェン氏は当面、カナダ・バンクーバーのAirbnbに滞在しつつ、リモートワークでOpenAIの仕事を続けるという。

チェン氏はこれまで12年にわたって米国に在住しており、最近ではOpenAIの生成AIモデルであるGPT-4.5の開発において「極めて重要」な役割を果たしたとのことだ。

米国では2025年1月のトランプ政権発足後、難民または亡命者として認定された移民による永住権申請の処理を停止したと報じられている。ドナルド・トランプ大統領は 合法的な移民は支持すると述べており 、政権当局者らも、トランプ氏が選挙公約に掲げた大量送還は暴力犯罪を犯した人を対象とするものになるとしていた。だが、実際のところの対応は、グリーンカード保有者全般を「国家安全保障上の脅威」とみなしているようで、これまでに数名が拘束され、国外追放の危機に晒されている

このような政策は米国のIT企業、特にAI分野に大きな打撃となる可能性がある。ジョージタウン大学の安全保障・新興技術センターの調査によると、2019年にフォーブス誌が発表した「最も有望」な米国のAIスタートアップ企業50社のうち、66%は移民の創業者によって設立されている。またNational Foundation for American Policy(NFAP)の報告では、米国でAI研究に携わる大学院生の約70%が外国人とされている。OpenAIのCEO、サム・アルトマン氏は2023年に、ハイスキルな外国人労働者の受け入れ経路の簡素化を提唱していた。

ただ、チェン氏のケースに関しては、事態が話題になった後でOpenAIが声明を出し、グリーンカードの申請がOpenAI入社よりもやや前のことで、OpenAIとして申請に関わっていなかったと述べ、さらにチェン氏が提出した申請書類になんらかの問題があった可能性があるとした。この声明が事実を述べているのか、いくらか政府に対する忖度を含んでいるのかはわからない。

いずれにせよ、米国政府の移民政策や助成金の削減、そして特定の科学分野に対する敵意は、米国からの優秀な頭脳の流出を促進しているようだ。Nature誌が1600人超の科学者を対象としたアンケート調査では、75%が米国外の移住を考えていると回答したとのことだ。

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