JITコンパイルにより動作が快適に
iPhoneでゲームエミュレータが高速動作。EU限定でAltStore Classicがリリース

AltStore PALは、EU在住のiPhoneおよびiPadユーザーに提供されている、Apple公認の代替アプリストアである。2024年4月以降、EUがデジタル市場法(DMA)を施行したことにより、同域内ではApp Store以外でもアプリの配布が可能となっている。
このAltStore PALの1周年を記念して、「AltStore Classic」がリリースされた。これにより、Appleの公証を受けていない多数のアプリ、特にJIT(Just-In-Time)コンパイルを必要とするアプリが、手軽にインストール可能となった。
AltStore Classicは、2019年から提供されている「AltStore」(EU域外でも利用可能)と本質的には同じである。ただし、現在のAltStore PALは、AppleがEU域内限定で公認したAltStoreという位置づけだ。つまり、新しい代替アプリストア内に、別の代替アプリストアをインストールする形となる。
新バージョンのAltStore Classicは、EU在住のユーザーにとって以下のような利点がある。
- サイドロードアプリの「3つまで」という制限が撤廃
- アプリの「7日ごとの再署名」も不要
- アプリのインストールにPCやMacを使用する必要がなく、Apple IDの入力も不要
ただし、非公証アプリを管理するためには、従来通りPC/Mac用の「AltServer」が必要である。
AltStoreチームは、新たな補助アプリ「StikDebug」も発表した。これを使用することで、AltStore Classic経由でインストールしたアプリに対して、iOSデバイス内でJITコンパイルが可能となる。
通常、ソフトウェアは実行前にすべてのコードをコンパイルするが、JITは実行中に必要な部分だけをその場でネイティブコードに変換する。これにより、特に処理の重いエミュレーター系アプリで、現実的な速度が得られるようになる。
エミュレーターには「インタプリタ方式」と「JITコンパイル方式」がある。前者はソースコードを1行ずつその場で解釈して実行するのに対し、後者はネイティブコードへ変換して再利用するため、処理速度がはるかに速い。
アップルは基本的に、JITコンパイルを使用するアプリに公証を与えない。AltStore PALで配布されているアプリも同様の制限があるため、『DolphiniOS』のようなゲームキューブやWii用ゲームを動かす高性能エミュレーターは、App Storeでの配信を断念せざるを得なかった。
しかしAltStore Classicでは、そのDolphiniOSや、Nintendo Switch用のゲームを動かす「meloNX」なども使用可能になる見通しだ。
なお、Nintendo Switchエミュレーター「Yuzu」は、任天堂に訴訟され、約3.6億円の和解金を支払い、ソースコードを破棄する事態となった。一方、meloNXに対する法的措置は現時点で確認されていない。
もちろん、エミュレーターを利用する際には、ROMデータなども含めて著作権を侵害しない、合法的な手段で入手したものだけを使う必要があることは言うまでもない。