天の川銀河から飛び出してしまうかも
時速193万kmで移動する「最速の太陽系外惑星」、2011年と2012年のデータから発見される

NASAゴダード宇宙飛行センターの博士研究員ショーン・テリー氏ら天文学者たちは、少なくとも時速193万kmという想像を絶するスピードで天の川銀河内を移動する恒星およびその伴星となる太陽系外惑星を発見した(かもしれない)と発表した。
2月10日付けのThe Astronomical Journalに掲載された論文によると、この2つの星の速度は(もしそれが間違いないと確認されれば)、太陽系が天の川銀河内を移動する速度のほぼ2倍で動いていることになり、太陽系外惑星系の最速移動速度記録を樹立することになる。また、この恒星に追随する系外惑星は、いわゆる超海王星型惑星と考えられる。
2011年、日本とニュージーランドの4つの学術機関が共同で行っている、重力マイクロレンズを用いて太陽系外惑星や暗黒物質などを観測するプロジェクトMicrolensing Observations in Astrophysics (MOA)のチームは、ニュージーランドのカンタベリー大学マウントジョン天文台観測されたデータを精査している最中に、偶然この2つの天体を発見した。
惑星などの物体が恒星の近くを通過するとき、その恒星からの光は、より近い物体の重力によって曲げられるため、通常よりも大きく明るく見える重力レンズ効果を伴うことがある。MOAプロジェクトは、それを観測することで太陽系外惑星を発見しようというものだ。
そして、2011年のデータから発見された一対の天体は、太陽の20パーセントほどの質量を持つ恒星と、地球の約29倍の重さを持つ惑星のペア(または木星の約4倍の質量とより小さな衛星を持つ、恒星系からはじき出された自由浮遊惑星)である可能性が高いと考えられた。
どちらの説が正しいかを確認しようと思った科学者らは、新たに2021年、ハワイのケック天文台と欧州宇宙機関(ESA)のGAIA衛星のデータを用いてこれらの天体を観測した。もし、この2つの天体が惑星とその衛星であるならば、この観測方法では天体は暗すぎて検出できない。だが、片方が恒星で、もう片方がそれに付随する系外惑星であれば、新しい観測でも(恒星だけは)発見できるはずだ。
そして、この観測では、約2万4000光年離れた天の川銀河の星が密集するバルジと呼ばれる領域で、有力な候補となる天体を見つけることができた。ただ、チームは2011年と2021年のデータを比較し、10年間でこの恒星がどれぐらい天の川銀河内を移動したかを計算したところ、冒頭に紹介したように、とんでもない速度で移動していることが判明した。
この速度は、あくまで地球から見た2次元的な距離から算出した数値であり、奥行きまでは考慮されていないという。もし実際の速度を算出すれば、約210万kmにもなる可能性もあるとのことだ。
ただ、まだ科学者らは新しい観測で見つかった恒星が2011年の物と同一かどうか確信を持てていない。そのため「もう1年観測を続け、それが計算どおりの方向と距離へ動いているかどうかを確認し、当初信号を検出した地点から来たものであることを確認したい」とベネット氏は述べている。
テリー氏は「今回のケースでは、われわれは広視野なMOAで最初にこの天体を発見し、ケック天文台とGAIA衛星の高い解像度でフォローアップを行った」とした。だが、重力マイクロレンズ効果観測に特化した設計で、現在ゴダード宇宙飛行センターで組み上げ中のナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡が稼働すれば、それ単独で、高速移動する恒星に惑星がどのくらい多く存在しているのか、恒星系がどうやってこのような移動速度にまで加速したのかについての手がかりも得られ「追加の望遠鏡による観測は必要なくなるだろう」と述べている。

- Source: The Astronomical Journal
- via: NASA Mashable