Wi-Fiルーターの設定は確認しておこう
TikTokの次は中国製Wi-Fiルーター?米政府当局が懸念示す

現在、米国ではTikTokの禁止をめぐって、ショート動画SNSの行方がどこになるのかが注目されているが、政府当局は「TikTok後」の新たな懸念として、中国企業が販売する家庭用Wi-Fiルーターへの監視を強化しているという。
CNBCによると、現在米Amazonで最も売れているWi-FiルーターはTP-Linkのものだという。そして専門家らは、このネットワーク機器ブランドの製品が中国によって悪用され、米国内の重要インフラへの攻撃の踏み台になるのではないかと懸念している。
この懸念について昨年夏には共和・民主両党の議員から米商務省に書簡が送られている。Wall Street Journalが昨年10月に報じたところでは、米国の家庭用および中小企業向けルーター市場の約65%を占め、連邦機関でも使用されているTP-Link製のWi-Fiルーターに「異常な脆弱性」があり、そこに中国のハッカー集団が侵入し、大規模な機器ネットワークを使用して、西側諸国の組織にサイバー攻撃を仕掛けていたことが判明したとされている。
そして、「中国政府がTP-LinkのようなSOHO(小規模オフィス/自宅オフィス)ルーターを日常的に使用して米国で大規模なサイバー攻撃を行っていることを踏まえると、非常に憂慮すべき事態になる」と書簡は述べている。
書簡を提出した下院のラジャ・クリシュナムルティ議員は、まだ政府による「撤去計画については承知していない」と述べている。クリシュナムルティ議員が示したデータによれば、TP-Link製品の米国への浸透は、これまでに中国がほかの分野の製品で用いたのと同じような手法で行われているという。つまり、需要を大きく超える量の製品を作り、余剰分を輸出して競合を圧倒し、さらにその製品を標的を混乱させたり、バックドアにアクセスして利用するやり方だ。
同議員は「中国は米国民からデータを収集する意図を持っており、今後もそうするだろう」そして、ファーウェイの機器は禁止したにもかかわらず「なぜ中国にもうひとつの裏口を与えるのか」と述べた。
書簡に署名した一人のジョン・ムーレナー下院議員は、TP-Linkは米国と米国民に対する本格的なハッキング作戦を展開している中国政府と関係があり、そのルーターは米国民にスパイ行為のリスクをもたらすと語っている。そして「来年にはTP-Linkルーターが禁止され、既存の中国製ルーターを安全な米国製ルーターに置き換えるプログラムが実施されることを期待する」とした。
こうした非難に対し、TP-Link Technologiesは、同社が米国でルーター製品を販売しておらず、また同社のルーター製品にはサイバーセキュリティ上の脆弱性はないと述べている。一方、最近カリフォルニア州に米国市場向けの新しい本社を設置したTP-Link Systemsは、問題とされるTP-Linkとは別会社でオーナーも異なるとし、同社が米国市場向けに製造するルーター製品の大半はベトナムで作られていると述べた。
イスラエルのサイバーセキュリティサービス企業Sygniaの企業開発担当VPガイ・シーガル氏は、TP-Linkのルーターが防衛機関を含む政府機関で普及していることに加え、同社は米国で家庭や中小企業向けのルーター市場の大半を占めていると述べた。
そして、もし禁止措置が講じられるなら、それは家庭の利用者に対するリスクよりも、国家安全保障上の懸念や、軍事即応性や国家安全保障に及ぼす影響に関してのものになる可能性が高いと指摘した。現実的には、まず連邦政府と防衛部門での使用を禁止し、段階的に禁止範囲を拡げていく格好になるとシーガル氏は予想している。
セキュリティ企業Varonis のインシデント対応およびクラウド運用担当VPマット・ラドレック氏はCNBCに対し、「消費者は一般的に、個人のプライバシーへの影響について認識すべきだ」とし、TP-Linkのルーターの根本的な問題は暗号化されていない通信にあり、これは一般の人々が十分に情報を得ていない問題だと述べた。
そして「これらのルーター上の暗号化されていない通信はすべて危険にさらされる可能性がある。ネットワーク内の通信はパフォーマンスを優先するため、暗号化されていないことが多く、インターネットの速度は速くなるが、個人データが危険にさらされる可能性がある」と述べた。