米国では政府もAI強化用に収集されるデータへの対応を検討中

AI企業への共同声明に著名人1万以上が署名。AI強化のための無許可コンテンツ使用を警告

Image:Ben Houdijk/Shutterstock.com

ABBAのメンバーや俳優のジュリアン・ムーア、Radioheadのトム・ヨークをはじめとする1万500人以上の著名人や各業界団体が、生成AIモデルを強化学習させるために、彼らのクリエイティブコンテンツを使用しないよう警告する共同声明に署名した。

この共同声明は「生成AIのトレーニングのためにクリエイティブな作品を無許可で使用することは、それらの作品に携わった人々の生活に対する重大かつ不当な脅威であり、決して許可されてはならない」と述べている。

署名した1万人を超える著名人は、上に記した以外にも、ロックバンドThe Cureのロバート・スミス、作曲家・ピアニストのマックス・リヒターといったミュージシャン、ケヴィン・ベーコン、ロザリオ・ドーソン、F・マーリー・エイブラハムら俳優、カズオ・イシグロ、アン・パチェット、ケイト・モッセ、ジェイムズ・パタースンなどの作家たち、元サタデー・ナイト・ライブのスターであるケイト・マッキノンほか映画、テレビ、音楽、出版業界の大物たちが賛同している。

近年のAIモデルの発展により、生成AIの精度を高めるには、非常に大量のコンテンツを学習させなければならなくなってきている。いまでこそ、大手のAI企業は強化学習用のコンテンツにライセンスされたものを使うようになりつつあるが、AI企業の中には、いまだインターネット上からかき集めたコンテンツも学習用に使われている。

AIモデルのトレーニングに自分が関係する作品が無断で利用されることは、クリエイターたちにとっては大きな懸念事項だ。ハリウッドでは昨年、生成AIが俳優や脚本家の仕事の一部を奪う可能性が議論され、映画俳優組合・米テレビ・ラジオ芸術家連盟(SAG-AFTRA)および全米脚本家組合(Writers Guild of America)が、数か月にわたってストライキを起こすなど、大きな問題となった。

また、現在は一部AI開発企業らが、無許可でなおかつ適切な金銭的補償なしにニュース記事や音楽など著作権のあるコンテンツを使用したとする複数の訴訟が、出版社や音楽業界から起こされている。

The Guardianによると、この共同声明は、Stability AIの元幹部、エド・ニュートン=レックス氏が中心となって作成され、AI企業が人々の芸術や作品を「トレーニングデータ」と呼び、そのクリエイターたちを「非人間化」していると非難している。ちなみに同氏は、Stability AIが著作権で保護されたコンテンツをAIトレーニングに使用することに反対して会社を辞め、現在は「Fairly Trained」というAI倫理に関する非営利団体を運営している。

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