デジタルコンテンツの「購入」は「所有」ではない

カリフォルニア州、ダウンロード販売はあくまで「ライセンス付与」であることを強調するよう義務付け

Image:FREE-ELEMENT / Shutterstock.com

米カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は、デジタル販売されるコンテンツ商品は、購入者がこれを所有するのでなく、そのライセンスが付与されているだけであることをストア側が明確に購入者に伝えるよう義務づける法案(AB 2426)に署名した。

ビデオゲームは近年、物理メディアによる販売からダウンロード販売へとその主要な流通経路が変化しつつあるが、このダウンロード販売において、購入したユーザーはそのゲームそのもの所有しているのではなく、ゲームをプレイするためのライセンスを与えられているだけだということはあまり知られていない。

今年4月1日には、自動車ゲーム『The Crew』が突然プレイできなくなり、その後開発元であるUbisoftが購入者のUbisoftアカウントからこのゲームのアクセスライセンスを取り消すという事例が発生した。一部のプレイヤーは、Ubisoftからの事前の連絡もなく、ゲームを起動したときに初めてアクセスできなくなった旨を記したメッセージを見たと苦情を述べた。

これはUbisoftがこのゲームのオンラインストアでの販売を終了し、サーバーをシャットダウンするという一連の対応によって発生した問題だ。The Crewはオンラインサーバー上で複数のプレイヤーが参加するマルチプレイゲームだが、発売から10年以上が経過し、後継作品となる『The Crew 2』や『The Crew Motorfest』もすでにリリースされている。サービス提供側としては、このゲームを購入する人も少なくなり、サーバーを維持するコストもかかるため、単に製品ライフサイクルを終了したということができる。

しかし、いままでこのゲームを楽しんできたプレイヤーの側から見れば、これは自分がお金を支払って「購入」した商品であり、ゲームは自分の物だという認識だった。このような事例は他にもいくつか起こっており、デジタルストアでのゲームの「購入」が何を意味するのかついて、メーカー側との認識の違いが浮き彫りになってきた。

この例はゲームに限らない。ソニーは昨年、米国のPlayStation Storeで購入されたディスカバリーチャンネルのコンテンツが、2023年12月31日をもってユーザーのライブラリーから削除されると発表した。動画ストリーミングサービスから番組が削除されて視聴できなくなるのはよくあることだが、購入コンテンツに関しては、ユーザーがいつでもそれを視聴できるようにしたいと考えて購入料金を支払っている。にもかかわらず、その番組が突然削除されるとなれば、不満が漏れるのも当然だ。この例では、ソニーは後に、ユーザーが購入した番組に関しては削除しないとの対応に変更することを発表した。

Image:Vantage_DS / Shutterstock.com

冒頭に紹介したカリフォルニア州の法案について、州議会議員のジャッキー・アーウィン氏は「小売業者が物理的なメディアの販売から方向転換を続ける中、デジタルメディアの購入に関する消費者保護の必要性がますます重要になっている」と声明で述べ、「AB 2426に署名した知事に感謝します。これにより、デジタルメディアの販売者が、消費者に自分の所有物であると誤って伝える虚偽で欺瞞的な広告が過去のものとなることが保証されます」と続けた。

ストア側がコンテンツのライセンスを販売しているだけとの表示を明確にしたところで、将来デジタル販売で入手したコンテンツが消えてしまう可能性は消えないが、少なくともそうなる可能性があるということを納得してから料金を支払うようにすることはできるだろう。

関連キーワード: