【防災月間】ポータブル電源特集

「災害対策に最適な」ポータブル電源を選ぶコツ。防災安全協会に聞く“チェックすべき項目”

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災害への備えとして、ポータブル電源へのニーズが年々高まりつつある。直近でも、地震や台風などによって停電の被害も発生し、それをきっかけに防災意識も高まっているだろう。そして9月は防災月間として、対策を改めて見直したいタイミングである。

しかし災害用としてポータブル電源を考えたとき、どのようなことを気にすればよいのだろうか。そのような中で、一般社団法人防災安全協会では、ポータブル電源に対しても「防災製品等推奨品マーク」を認定し、災害用としておすすめできるポータブル電源を案内している。

そこで本記事では、防災安全協会 事務局長の水口健氏にインタビュー。ポータブル電源を選ぶポイントや、そもそも災害時にポータブル電源が必要な理由などを伺った。

なおインタビューは、前編と後編に分けて掲載する。前編ではポータブル電源の認証や選び方について、後編では安全に使うための方法や保管方法をはじめ、最終的な処分についてもご紹介していく。

一般社団法人防災安全協会 事務局長 水口健氏

防災用としての基準を満たしたポータブル電源を認定

ーー防災安全協会がポータブル電源に対して行っている取り組みについて教えて下さい

防災安全協会は、「防災製品等推奨品認証制度」を主たる事業として行い、その中でポータブル電源を一つのジャンルとしています。ポータブル電源の第1号を認証したのは2019年4月になります。

現在、50くらいのポータブル電源のブランドと関わっています。審査は第三者委員会によって行われ、審査員の評定のもとを取りまとめて結果を公表・通知します。ポータブル電源の審査会は年に3回で、直近では11月と来年の3月、7月に予定しています。

審査の前には、ポータブル電源に関する資料をメーカーからいただきます。必要なものは、会社概要や取り扱い説明書をはじめ、PL保険証書の写し、保証・ユーザーサポートの説明、使用している電池や電源の資料など。これに加えて、落下試験や振動試験の結果も任意で求めています。

落下試験の結果を求めているのは、避難所で使用することを考えたときに、余震などで揺れて落としたと きに安全が担保される必要があるからです。不特定多数が扱うことになるので、扱いが雑になってしまう可 能性もあるかもしれません。なので、テーブルなど1mくらいの高さからの落下を想定しています。

振動試験については、防災用途を主目的にしている推奨品の認証として、車などに乗せての移動は推奨品の範囲外となります。そのため試験は任意となります。普段使いとして振動を当てないことが肝心です。

2024年の防災・防疫推奨品総合カタログより

また、国連にリチウムイオン電池の輸送安全規定として「UN38.3」というものがあります。審査の際には、このUN38.3の電池を使っているという証明書が必要です

さらに言えば、ポータブル電源でエラーが起きやすいのは充電のときです。衝撃や劣化や熱などでリチウム電池が弱っているときに、強制的に充電させるというのは危険です。人間で言うと、腹痛なのに食べ物を無理やり食べさせるのと一緒。バッテリーの場合は発熱、発煙、発火です。それを制御するのがACアダプターであったり、BMSという電圧回路の制御システム。そのため、電源部分が内蔵型でなければ、PSEの取得証明も資料として提出をお願いしています。

一方で、不合格な部分があると、それ以外が99点だとしてもトータルでは0点です。たとえば、最近の製品はパススルー機能と言って、コンセントからポータブル電源を通して電力供給して、停電になったら自動的にバッテリーに切り替えられるものもあります。ただ、無停電電源装置(UPS)と言えるほどの切り替え速度ではないのが大半です。

なので、UPS機能だとミスリードしているような製品に対しては、誇大広告だとして認証する際に指摘します。メーカーとして、ユーザーに対して製品を防災視点でどう使わせるかというのが重要なので、UPSと書いてしまって、万が一の際にサーバーが止まるなど、データが保護できないことがあればだめなのです。

災害時におけるポータブル電源の使われ方

ーー備えとして注目されているポータブル電源ですが、実際に被災地ではどのように活用されているのでしょうか

避難所でいうと、やはり用途としては、明かりの確保とスマートフォンの充電ですよね。不特定多数の人が来て、スマートフォンの充電をしようとする。当たり前ですが、スマートフォンは使っていくうちに、バッテリーの残量が減っていきます。使い方によって減る速度は変わりますが、満充電にしておきたいという方が多い。そのときにポータブル電源が必要になります。

避難所にはエンジン式の発電機もありますが、排気があるので、体育館などの屋内で使えないですよね。外に置けばいいけれども、避難場所の体育館によって使いにくい場合もある。地方とは違い、東京都内だと体育館がビルの上にあったりもします。3階だったり4階だったり。そうすると外で発電機を動かして、延長コードで電気を屋内まで引き込むのは現実的ではありません。

そういった問題は、ポータブル電源があれば解決できます。外に発電機を置いておいて、ポータブル電源はそこで充電する。そして、充電が終わったら上に持っていけばよいのです。

また、メーカーは最近、防災用途を発展させるためソーラーパネルとセットでポータブル電源を販売しています。ポータブル電源の容量は使った分だけ減っていきますので、停電が長引くような場合、太陽光があればソーラーパネルから充電するという方法もあり、長引く停電にも対応できます。

ーー個人の場合、ポータブル電源は災害時にどのように役立つのでしょうか

個人だとスマートフォンの充電もそうですが、自宅のインターネットを使うならルーターやモデムなどの電源も必要。あとは冷蔵庫を使いたいという声もあります。夏の時期に停電になった場合、エアコンまでは厳しいですが、扇風機が使えるとありがたいです。

電気製品って探すと、生活の中にたくさんあるんです。たとえば介助用の電動ベッドも、手動と切り替えられないものであれば、停電時にはリクライニングができなくなります。電動車いすのバッテリーにも電気が必要ですし、電動シャッターも電気がないと開けられなくなったりします。補聴器の充電にも電気を使います。

病院だって、ワクチンを保存する冷蔵庫がありますが、電気がないと中のワクチンが全てだめになってしまう。歯医者も機械だけでなく、ベッドも電動なので電気がないと動きませんよね。ただ通常のポータブル電源では、生命に関わる機器への給電はNGなので注意が必要です。

ちなみに、小児喘息の子どもが家で使うネブライザー(呼吸器)や、在宅介護時に行う痰吸引などには、もしもの停電時のため、ポータブル電源から給電できたりします。

ポータブル電源、購入時のチェックポイント

ーーポータブル電源を選ぶ際、どのようなことに注意すればよいでしょうか

防災用としては、私たちの防災製品等推奨品に認証されている製品から選んでいただくと良いと思います。それに加えて、電話によるサポートや使用後の廃棄までサポートしている点を注意してみてください。

ちなみに認証の際には、日本国内で日本語の話せるスタッフが電話でサポートができるのが条件になっています。もしもの時、すぐに適切なサポートを行うことを優先してほしいですね。

ネットショッピングでは、実体として日本に法人が無いのに、日本のメーカーとして見せかけるような例もありします。そういうポータブル電源のメーカーは山ほどあります。そういうところは、保証や サポートを優先せずに連絡がつかなくなってしまうわけです。だからポータブル電源の推奨認証品マークを与えるうえで は、メーカーの保証やサポートが重要になってきます。

ーースペック面ではどのようなことを気にすればよいのでしょうか

購入時にはバッテリーの容量に注目しがちですが、出力も見ておいたほうが良いと思います。基本的に、電池容量に見合うくらいの出力用をもつインバーターしか入っていません。これは高出力のインバーターはコストが高いのと、大きさの兼ね合いもあります。

300Whぐらいの電池容量であれば、良くても200Wぐらいの出力となっていることが一般的です。また最近は、1000Whの電池容量でも1000WのAC出力を搭載しているモデルも出てきました。大容量の電気を使いたいという要望があるからですね。

購入の際には容量だけでなく、出力もチェックされたい

できればポータブル電源を購入する前に、簡単な計算をしてみてください。たとえば消費電力100Wの製品と50Wの製品を同時に5時間使用したいときは、100W+50W×5時間=750Wの電力量を使用します。この場合ポータブル電源の選択は、750Wh以上の容量で、出力150W以上が必要となります。

購入してから使いたい家電に出力が足りなかったら、使えるものが限られてしまいますよね。簡単な計算式で必要な出力は求められますが、案外気づかないポイントだったりします。

避難生活とか停電が長引けば、普段使っている家電品を使いたくなってきます。1日目は我慢できて、2日目も何とか我慢しても、3日目はそろそろといった具合です。そういったときに、これだけは欠かせない家電品の出力のスペックを知っておかないと、使えない家電が出てきたりするので、購入の際は出力の数値もぜひ気にしてみてください。

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