プライバシー保護も約束

人気iPadアプリProcreate、生成AI機能を搭載しない宣言。「AIは我々の未来ではない」

Image:AngieYeoh/Shutterstock

もっか生成AIは注目の技術であり、主なチップの供給元であるNVIDIAの時価総額を世界一に押し上げ、あらゆるアプリやサービスでも何らかのAIが採用されるようになった。Adobeも画像編集ソフトPhotoshopほかに、いち早くAI生成機能を搭載している

そんななかiPadの人気デジタルイラスト制作アプリProcreateが「生成AIは私たちの未来ではない」と反発を表明している。

Procreateのジェームス・キューダCEOはXに投稿した動画で「我々は生成AIを製品に導入するつもりはない」「業界に起きていることが気に食わないし、それがアーティストにやっていることも不快だ」とAIへの怒りを露わにしている。

さらに公式サイトにも新たなページを開設し、AIとユーザーのプライバシーに対する同社の姿勢を鮮明に打ち出している。そこでは「生成AIなし」「あなたの作品はあなたのもの(ユーザーの作品を学習対象としない)」「個人情報を守ることに誇りを持っている(ユーザーのアクティビティは追跡しない)」という立ち位置を約束している。

また「創造性は人が作るもので、生成されるものではない」というフレーズを掲げつつ、このスタンスを取る理由を説明している。「生成AIは作品から人間性を引き剥がしている。この窃盗を基盤として構築された技術は、我々を不毛な未来へと導いている。機械学習は多くの長所を持つ魅力的な技術だとは考えているが、生成AIが進む道は我々にとっては間違っている」と痛烈である。

Procreateは長年にわたり最も人気のあるiPadアプリの1つであり、強力なクリエイティブツールとして親しまれている。アップルも事あるごとにApp Storeや様々なイベントでProcreateを取り上げており、その存在感は大きい。

今回の声明は、すでに多くのクリエイターらから称賛を集めている。現在の生成AIブームに対する反発は根強く、例えばライバルアプリのClip Studio PaintはAI画像生成機能を発表するや非難が殺到し、数日後には撤回していた。またお絵描きタブレットメーカーのWacomやマジック:ザ・ギャザリングのWotC社は、広告に生成AI画像を使っていたとして謝罪を表明している

現在の生成AIは人間の創作物を学習元としていること、その生成物が仕事を奪いかねないことから、当分は軋轢が続くことだろう。現在のAIブームが過ぎ去ったあと、クリエイターにとって脅威が少ない実装方法を見つけ、適切なプライバシー対策を講じられるか、今後に注目したいところだ。

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