アプリ内に自社サイトへのリンクを表示した結果

Spotify、アップルにiOSアプリ更新を阻まれていると発表。バグ修正や機能追加も不可能な状態

Image:nikkimeel/Shutterstock.com

先日アップルは欧州連合(EU)にて、App Storeを通じて音楽ストリーミング・アプリ市場での支配的地位を乱用したとして3000億円以上の罰金を科されていた。Spotifyは、まさに本裁定に沿って行われたアプリのアップデートをアップルが妨害していると主張している。

The Vergeが入手した欧州委員会宛のメールによると、同社はアプリ内にサブスクリプション内に価格情報と自社サイトへのリンクを直接表示するアップデートを提出したところ、アップルは「承認もしなければ、回答もしてこない」とのこと。バグ修正や機能の追加など、ユーザーのための更新も一切妨げていると述べている。

Spotifyは本アップデートを3月5日に提出。その前日に欧州委員会が出した、アップルのアンチステアリング条項「違法」であり、「代わりとなる安価な音楽配信サービス」に関する情報をアプリ内に許可するよう命じた裁定を受けて行ったという。

同社は、今回の件が「アップルを野放しにした場合、欧州委員会の決定を逃れようとする、あるいは守らないこと」の一例だと主張。その上で欧州委員会がアップルに連絡し、Spotifyのアップデートを承認するよう要求することを請願している。

さらに「アップルの行状を考えると、Spotifyはアップルの遅延が意図的なものであり、コンプライアンス(EUの決定)遵守を遅らせる、あるいは完全に回避することを目的としているのではないかと懸念している」とも付け加えている。

Spotifyの広報担当者は、The Vergeに対して、まだアップルからの連絡を待っている(上記メールから9日経過)との声明を発表。「アップルの遅延は、24時間以内に提出されたアプリの審査を完了するという自らの主張と真っ向から矛盾しており、欧州委員会が示したタイムラインにも反している」と述べている。

もっとも、アップルは欧州委員会の裁定が下った直後に上訴すると宣言。また、Spotifyのいう24時間以内のアプリ審査完了も「“通常は”同じ日に完了する」と言うに留まっている。この声明が(欧州委員会への反応のはずが)Spotifyを名指ししていたことから、今回の遅延もある程度は予想できたと思える。

また、この裁定はEUのDMA(デジタル市場法)規制とは別の問題である。そちらでは、Epic GamesのスウィーニーCEOがアップルの対応を「悪質なコンプライアンスの新たな例」等と批判したところ、アップルはEpicの開発者アカウントを停止。しかし欧州委員会が「迅速な調査」をした後に、アップルは一転してEpicアカウントを復活させていた。

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