米輸出規制などが背景に

中国で“GPU抜き”のハリボテRTX 4090を売る詐欺が発生

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中国にてNVIDIAの最新GPU「RTX 4090」を搭載したグラフィックカードからGPUやVRAMを抜き取ったものを売りさばく、新手の詐欺が発生したと報じられている。

香港のPC関連情報サイトHKEPCは、被害者の1人の話を報告。「洪」と名乗る人物は、中古のRTX 4090を探していたところ、Carousell(香港版メルカリ)でMSI製カードを1万3000香港ドル(約24万円)の手頃な価格で販売している個人を見つけたという。

このCarousellは直接会って取引することが主流であり、洪氏も「本人に会えば問題ないだろう」と思い支払った。が、自宅に戻ってグラフィックカードをPCに装着したところ、LEDライトは光ったがファンが回転せず、GPUもまったく機能しなかったとのこと。

そこで馴染みのショップに分解してもらうとGPUがなく、VRAMの一部も取り外されていた。売り手とは連絡が付かなくなり、地元の警察に通報したものの、中古取引の追跡調査は困難だと説明され、協力を拒否。他の人にも警鐘を鳴らすため、HKEPCに情報を提供した次第だ。

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中国の中古市場には、RTX 4090搭載カードからGPUを抜き去った後のクーラーやむき出しの基板が溢れかえっている。今回の犯人も、それらを組み合わせてハリボテをでっち上げたのだろう。

なぜ、こんな事態が生じているのか。1つには米政府がAIや機械学習に使われるGPUに関して中国への輸出規制を強化し、それがRTX 4090にまで及んだこと。さらにRTX 4090搭載ボードを解体してAI向けに改造する専門の工場が、中国各地で稼働していることが背景にある。

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これらRTX 4090からはGPUとVRAMが取り外され、別の基板へと移植される。その余り物となったケースやファン、基板が中古市場に大量になだれ込んでいるわけだ。

NVIDIAは輸出規制を回避するため、中国専用に「RTX 4090D」を発表した。価格はRTX 4090と同じながら、CUDAコアやTensorコアの数を減らしたものだ。

中国や香港在住のユーザーは、RTX 4090本来のパフォーマンスを享受できないことになるが、それでも詐欺に遭うよりはマシだろう。