150件の警察の報告書を分析

アップル「AirTag」、ストーカー対策が機能したのは3分の1との調査結果

Image:Apple

アップルの忘れ物トラッカー「AirTag」には、本来の用途からは外れたストーカーや車の盗難に悪用された可能性のある事例が相次いでいる。そうした声を受けアップルも対策を強化しており、「望まざる追跡」(ストーカー行為など)を減らすために、今後は何段階かに分けてアップデートを行っていくと予告済みだ。

しかし150件もの警察の報告書を分析した結果、AirTagのストーカー対策が3分の1程度しか機能していなかったことが明らかとなった。

まず注意すべきことは、AirTag以前にも同種のBluetoothトラッカー製品は数多くあり、それらが悪用された例も少なからずあったことだ。その中でなぜAirTagが注目を集めているかと言えば、アップルの宣伝力が強いため、販売された数量もケタ違いで知名度も高いから、という側面が大きいと思われる。先行していた他社製品よりもAirTagのストーカー対策が強固であることは、The New York Times等のメディアが実際に検証していた

さて今回の報道は、米テックメディアMotherBoardによるものだ。同誌は直近8ヶ月の間に、米国内で最大の警察署数十か所に対してAirTagに言及した記録を要請し、そのうち8つの警察署から入手できたそうだ。

AirTagに関連ある150件の警察報告のうち、50件が女性から「自分の持ち物ではないAirTagによって、居場所を追跡されているという通知を(iPhoneから)受けたため、警察に通報した」とある。つまり、約3分の1だけストーカー対策が機能した、ということだ。

それら事例のほとんどは、「前は大切だった人」が関与していたことも判明している。ある女性は、「元カレにタイヤを切られ、監視のために車にAirTagを残された」と通報したとのこと。また、自分の車に何度もAirTagが付けられているのを発見し、暴行の前科がある元カレの仕業だと分かったとの報告もある。また、家を出るたびに車内で鳴っているAirTagを見つけ、元カレに問いただすと、浮気をしているかどうかを確認するために置いたと認めたケースもあったようだ。

なぜ加害者が特定できたかといえば、彼らは同じ時間、同じ場所に現れる傾向があり、目撃されやすいためだそうだ。

電子フロンティア財団のサイバーセキュリティディレクターであるエヴァ・ガルペリン氏は、これらの報告はアップルの対策が機能している証明だ、とコメントしている。「誰かがたまたまAirTagを見つけたのではなく、アップルが実装したストーカー対策がようやく機能し、その結果、一部の人達が警察に行くようになったということです」(ガルペリン氏)。

アップルは警察の捜査協力の要請に協力的であり、逆に警察があまり熱心ではないとの報道もあった

今後AirTagが犯人逮捕のきっかけになることや、アップルがいっそう対策を強化すること、そして警察もストーカー被害に対して真剣に取り組むことを祈りたい。

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