将来のZoomなら……できるかも?

ZoomのCEO、社内で「Zoomでは信頼関係を構築できない」と発言。出社求める理由として

Image:Kateryna Onyshchuk/Shutterstock.com

ZoomのCEO、エリック・ユアン氏は今月、リモートワークの従業員に対し効率的な仕事のために出勤するよう求めた。しかし、リークされた社内会議の録音データのなかでユアンCEOは、従業員に出勤を命じたのは、リモートワークでは「信頼を構築したり業務に対して革新的になることができなかった」からだと述べていることが明らかになっている

この発言は、8月3日に行われたZoomの社内会議で飛び出したもの。ユアンCEOは従業員に対し「過去数年の間に、われわれは多くの新しい『Zoomies』を採用したが、彼らとの信頼を築くのが本当に難しかった」と述べている。これは、新型コロナのパンデミックのなか、Zoomのようなビデオ会議を駆使することで自宅でも勤務できるようにしてきた企業にとっては共感できる話かもしれない。ちなみにZoomは、パンデミック前に2000人だった従業員数を6000人にまで増やしていた。

ただ、Zoomはウェブサイトで、Zoomによってリモートワークが「よりつながりある、より協力的な、より知性的な」ものになり、「多くのことを実現する」手助けになると宣伝している。さらに「Zoomに切り替えた顧客の95%が、チームメンバー間のパフォーマンスと信頼が向上した」と述べているとも記している。

残念ながらユアン氏の会社では、そのようなことはなかったようで、CEOは「信頼こそすべての基礎であり、信頼がないと、私たちの仕事は遅くなる」と漏洩した音声データのなかで述べている。また「Zoom会議では、参加者が皆非常にフレンドリーになってしまう傾向がある」とも述べており、そのような状況では、議論を戦わせて新しいアイデアを生み出すことは難しいかもしれない。

CEOはこうした望ましくない状況を改善するため、オフィスから約80km圏内に住む従業員には少なくとも週に2日は出勤して顔を合わせるよう求めている。ただし、例外を申請することも可能だとしている。

ユアンCEOの発言は、新型コロナのパンデミックによって各国で行われたロックダウンの措置とともに勢力を拡大したZoomが、自宅からでも「没入型のオフィス内協力を可能にする」と宣伝する、そのメリットを自ら否定するものと言えるだろう。

ただ、ユアンCEOは、Zoom 2.0と称する将来のまったく新しいビデオ会議を構築するために、全員が協力し助け合うことを求めているようだ。2022年に同氏は、スタンフォードのビジネススクールの学生に向けたポッドキャストで、将来のZoomがスターバックスのような場所からでも打ち合わせに参加でき、互いに握手や抱擁をすればその感覚を感じることができるようにすることで、親近感を感じられるようになり、さらに話す言語が違っても互いに理解ができ、コーヒーがテーブルに置かれれば相手にその香りが伝わる……などといったことが可能になるだろうと述べていた。

将来、Zoomがそこまでできるようになれば、たしかにリモートワークの人々が相手でも、対面で仕事をするのと同じように、互いに信頼関係を構築できるようになるだろう。しかしいまのZoomでそれが難しいのなら、従業員は可能な限り出勤するほうが良いのかもしれない。

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