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“手術のTikTok配信”が原因で医療ミスを連発させた人気医師が免許剥奪に

Image:XanderSt/Shutterstock.com

7月13日、TikTokで美容整形手術をライブ配信することで人気の美容整形外科医「Doctor Roxy」ことKatharine Grawe氏が、オハイオ州政府発行の医師免許を永久剥奪された。理由は州医師会が、複数の患者からライブ配信中の手術における医師の過失の「明確かつ説得力ある証拠」の提出を受け、このような行為を続けた場合「公衆に差し迫った深刻な危害をもたらす危険がある」と判断されたため。

医師免許剥奪を通知する書面には、匿名の患者3人からの苦情内容が詳しく記されている。ある脂肪吸引手術においては、Grawe医師が常に手もとに細心の注意が必要とされる「カニューレ」と呼ばれる器具を扱っている最中にもかかわらず、カメラ目線で話しながら施術をおこなっていたとされる。結果としてこの患者は、術後に小腸穿孔や壊死性軟部組織感染症といった症状が現れて、長期間の入院を余儀なくされたとのこと。

別の例では、ブラジリアン・バット・リフトと呼ばれるおしりの形を整える手術と脂肪吸引、臍ヘルニアの根治手術を行った後で、患者が「けいれんと腹部の激痛」に見舞われ救急治療室に移送。検査の結果、横紋筋融解症が致命的な状態に至っていると診断され、小腸を一部切除せざるを得なくなったと報告されている。

そして3番目の患者は、シリコン豊胸手術を受けたところ、数日後から吐き気とともに傷口から出血。その後Grawe氏の「Roxy Plastic Surgery」を2度訪れたものの、Grawe氏による対応はなく「治療済み」として他の外科医に処置を委任、最終的にこの患者はせっかく入れたインプラントを除去するために再手術する羽目になった。

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州医師会は、このような結果はいずれも「日常的な医療行為であり得る合併症ではなく、むしろ無謀な行為と州の医療規則の無視によって引きおこされたものだ」と指摘した。

州医師会は、これらの苦情が提出される以前にもGrawe氏に対し、2018年と2021年の2度にわたって警告している。しかし、Grawe氏は警告と再教育プログラムの受講指示に正しく対応せずに医療行為を続けたと報告されている。

TikTokでの手術の配信は2022年10月まで続けられたが、改善もみられなかったため、州医師会はGrawe氏の医師免許永久剥奪を決定。標準的な医療基準に適合しなかったとして4500ドルの罰金も命じた。

医師会による聴聞会でGrawe氏は、TikTokで配信を始めたのは人々に美容外科手術を知ってもらい、患者と医師の間にある「堅苦しさと恐怖心の壁」を取り払うことが目的だったと述べた。ただ、いまは「あの愚かな配信の多くがいかにプロフェッショナルでないと思われたかを理解している」と反省も語った。

しかし、医師会は配信によって多くの視聴者からの注目を浴びたことが、次第に手術中に無謀な行動を起こす原因になったと指摘し「患者の幸福よりもTikTokでの名声を優先した」と非難した。記事執筆時点でGrawe氏のTikTokアカウントは閲覧することができないが、直近のフォロワー数は82.5万人に達していたという。

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