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90年代名作ゲーム『Myst』が、8bitゲーム機「Atari 2600」に“移植”中

Image:Vince Weaver

1993年に発売された名作ゲーム『Myst』を、8bit時代の名機「Atari 2600」に移植する個人プロジェクトが進行中だ。

米メイン大学の准教授ヴィンス・ウィーバー氏はゲームソフトの “デメイク(demake)” が趣味だという。ウィーバー氏いわく、デメイクとは古いゲームを新しいシステム用に作り直す “リメイク” に対して、ゲームをそれよりも古い時代のシステムに合わせて作り直すことを指すのだそう。

1993年にMacのオーサリングソフト「Hypercard」で制作した最初のバージョンが発売され、データ量の多い美しいグラフィックを大量に収録できるCD-ROMの普及とともに大ヒットした『Myst』は、その後様々なコンピューターやゲーム機、スマートフォンにまで移植され、2021年にはレイトレーシング技術搭載のGPUに対応する最新バージョンが発売されている

一方のAtari 2600は、さらにさかのぼって1977年に北米で最初に発売された8bitゲーム機(当時はAtari VCSの名称)で、ROMカートリッジでソフトを供給する形態により、移植された『スペースインベーダー』や『パックマン』の大ヒットをはじめ多数のゲームが発売された。

ウィーバー氏はこれまで「主にApple II向けにデメイク作品を作ってきたが、およそ1年前からはAtari 2600用としていくつか着手してきた」という。そして「最初は冗談で小さな概念実証のようなものを作っていたが、ポジティブなフィードバックをもらうと、ちょっと調子に乗ってしまう」とした。

Image:Vince Weaver

気になる画面の様子は、オリジナルとAtari 2600バージョンを並べてみると一目瞭然だ。ウィーバー氏も「最大の課題はグラフィックスだ」と述べているとおり、1990年代とは言え当時最新の3Dレンダリング技術で描かれた静止画を8bit機の160 x 192px解像度のスクリーンに移植しているのだから無理もないだろう。ちなみにAtari 2600のRAM容量は128バイトしかない。

ウィーバー氏は、Atari 2600版『Myst』を隅々まですべて再現する気はなく、クリアするまでのタイムを競う「スピードラン」ができるの程度の再現度を目標としていると言う。そしてゲームとしてプレイ可能なものにするためにいくつかのパズルの実装を行い、6月30日に開催されるMystファンのイベント「Mystrerium」に間に合わせたいとしていた。だが、結局本人も「かなり楽観的」と認めていたとおり、それは間に合わなかったようだ。

先週の時点で、ウィーバー氏はゲームの舞台となるMyst島の大半の部分を歩けるまでに再現し、いくつかのマーカースイッチを切り替えたり、ゲームに登場する謎の本を開いて見たりすることもできるようになったと述べている。

ウィーバー氏はAtari 2600版のグラフィックスを、オリジナルの面影を残したものにするため、独自の変換プロセスを採用している。その手順はウェブサイトに掲載されているので、興味ある方は一読されたい。なお、記事執筆時点では最新版としてv2.0がダウンロード可能になっており、StellaなどのAtari 2600エミュレーターを使用してプレイしてみることができる。オリジナルやその後の『Myst』に触れたことがある人は、もしも8bit時代に『Myst』があったら、という雰囲気を味わってみるのも良さそうだ。

なお、ウィーバー氏が以前Apple IIに移植したバージョンの『Myst』は、今回のAtari 2600版とは異なり、100%完全にプレイできる “デメイク” になっている。

ちなみに、ウィーバー氏のデメイク活動を原作メーカーのCyan Worldsは認識しており、オリジナルを共同開発したランド・ミラー氏からも感謝の言葉をもらったとウィーバー氏は述べている。またウィーバー氏はAtariとApple IIが搭載する6502アセンブリ言語でのコーディングは「リラックスして行える」ものであり、「今どきの若者たちには興味を持たれないかもしれないが、私が自分の作ったものを披露すると学生たちは非常に喜んでくれる」とした。そして、6502プロセッサーの設計者でメイン大学のOBでもあるチャック・ペドル氏が亡くなる前に、一度だけだが会う機会があったことを誇りに思っていると述べた。

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