唐揚げも食べたいです

宇宙で揚げ物はできるのか? 実際にフライドポテトを作ってみた結果

Image:Jag_cz/Shutterstock.com

人類が再び月を目指し、さらに火星を目指す時代になれば、宇宙飛行士は何か月もの期間を宇宙船内で過ごすことになる。そしてある日、無性に揚げたてのフライドポテトが食べたくて仕方がなくなるときが来るかもしれない。欧州宇宙機関(ESA)とギリシャのテッサロニキ・アリストテレス大学は、この切実な問題についての調査を実施した。

SF映画には、リング状の宇宙船が回転しながら宇宙を航行するシーンがよく登場する。これは回転することで遠心力を発生させ、船内の人が擬似的に重力下で生活できるようにするための構造だ。しかし現実の世界では、まだそのような宇宙船は開発されていない。そのため、宇宙を航行する船内では、宇宙飛行士は無重力(微小重力)状態での生活となる。

そこでジャガイモを揚げようと思えば、いろいろな困難が思い当たる。まず、揚げるための油をフライパンなどの容器にとどめておくことができない。それができたとして、油を加熱しても対流が発生せず温度が均一にならない可能性がある。もし均一になっても、投入したジャガイモが調理される過程で発生する気泡が、無重力下では上昇せず、ジャガイモの周囲にまとわりついて断熱層を形成してしまうため、どんなに揚げ続けても半生かもしれない。

Image:ESA

研究チームはこれを調査するため、回転式の実験用フライヤーと、調理過程および気泡の成長速度、サイズ、分布、およびポテトからの脱出速度を記録するための高速カメラ、油温とポテト内部の温度を記録する機能を備えた、全自動の実験装置を作った。

もちろん、微小重力を再現して行う実験であるため、揚げ油が飛散しないよう、装置は完全に密閉・加圧の上で封印。そして、ESAが微小重力環境での訓練に用いる航空機に積み込まれた。この航空機は、上空から放物線上に降下することで、擬似的に微小重力を作り出すことができる。

Image:ESA

そうして行われた実験の結果、意外にも、微小重力条件下でジャガイモを油に加えるとすぐ、地上と同様に蒸気の泡がジャガイモの表面から簡単に剥がれることがわかった。つまり、とりあえず宇宙空間でもフライドポテトを作ることはできるということだ(一部のパラメーターを微調整するにはさらなる研究が必要だが)。

もちろん、微小重力下でどうやってこの装置に油を入れ、ポテトを投入するか、揚がったポテトをどうやって取り出すかについてはまだわからない。だが、とりあえず揚げることは可能だ。近い将来か遠い将来かはともかく、これで宇宙でもフライドポテトが食べられる未来がやって来ることは間違いなさそうだ。

関連キーワード: