起源論争を終わらせる一歩となるか
まるで巨大なジャガイモ。火星の第2衛星ダイモスをホープ探査機が接近撮影
アラブ首長国連邦宇宙機関(UAESA)が、2020年に打ち上げたホープ探査機による、火星の第2衛星ダイモスのクローズアップ写真を公開した。探査機とダイモスとの距離は約100kmで、これはこれまでで最もダイモスに近い位置からの写真となる。
UAESAは「この画像と、これによる観測は、ダイモスの大気、組成、起源、そして何より火星を、もっと理解しようとする上でわれわれの知識を拡げる重要な一歩を表している」と述べた。ホープ探査機はダイモスへの接近時、赤外線分光計を使ってこの大きなジャガイモのような星の組成を調査しており、そのデータは、ダイモスが火星そのものから分離して形成されたであろうことを示している。これは、その起源に関する長年の論争を終わらせる新たな一歩と言えるかもしれない。
ダイモス(およびフォボス)の誕生は、それらが1877年に発見されて以来の謎だった。1971年にNASAが打ち上げたマリナー9号を皮切りに、いくつもの探査機がダイモスなどを撮影してきたものの、それらはいずれもはるか遠い位置からのものであり、その組成を特定することは困難だった。
これまでの研究では、ダイモスは小惑星または矮小惑星(準惑星)によく似た組成である可能性があり、主に炭素質コンドライトで構成されていることが示唆されていた。実際その形状はジャガイモのような歪な形をしており、元は球体だったとしても、主星である火星に接近しすぎて一部を“さらわれた” 可能性があるとされている。
ただ、ダイモスの軌道はほぼ円形で、火星の大気によって減速しつつあるとも考えられており、火星に接近しすぎていまの形状になったかどうかは断定できない。そのため、生い立ちとしては火星から分離して構成された説の他に、周辺を漂う塵やガスから生まれた説、小天体の衝突で形作られた説なども考えられているが、冒頭に述べたように赤外線分光計の観測データだけを見れば、火星からの分離説が濃厚ということになりそうだ。
エミレーツ・マーズ・ミッションとして2020年に日本の種子島宇宙センターから打ち上げたホープ探査機は、今年1月下旬にダイモス周辺での観測を開始し、今回発表された写真は3月に撮影されたとのこと。探査機は、2023年を通じて定期的にダイモスのそばを飛行することになっている。
- Source: Nature
- via: New Scientist