一罰百戒でしょうか

Nintendo Switchハッキング集団の幹部が釈放。一生かけて19億円超の賠償金を支払うことに

Image:Andrii Yalanskyi/Shutterstock.com

Nintendo Switchのハッキングデバイスを開発・販売していた組織の一員が、まもなく刑務所から釈放されて母国カナダへの帰国が許される。しかし、今後一生かけて任天堂への賠償金1450万ドル(約19億5000万円)を支払い続けることになる見通しだ。

このGary Bowserという人物は、「世界で最も悪名高いビデオゲーム海賊団体の1つ」と呼ばれたTeam-Xecuter(別名TX)を率いた首謀者のひとりだ。ちなみに「Bowser」とはスーパーマリオでお馴染みのキャラクター・クッパの英語名であり、米任天堂社長のDoug Bowser氏とも同じ名前である。2020年に逮捕された当時、海外のメディアでは「クッパが逮捕された」と話題になっていた。

TXは初代Xboxまでさかのぼる様々な脱獄(メーカーの意図に反してシステム権限を乗っ取る)デバイスを開発・販売してきた。これらはゲーム専用機で自作ソフトを動かすことを可能とする一方で、海賊版ROMをプレイすることを容易にしたため、ゲームプラットフォーム企業やゲームメーカーに大損害を与えたと見なされている。

そのため2020年にBowserらが起訴・逮捕されたことで、海賊版やハッキング業界に大きな衝撃が走った。TXのメンバーは全世界に散らばったが、国際的な包囲網が展開され、Bowserはドミニカ共和国で逮捕されている。

その後、Bowserは著作権侵害の民事裁判にて任天堂に1000万ドルの賠償金を支払うことに合意して和解。ほか米司法省に起訴された刑事訴訟では、任天堂に対して450万ドルの支払いが命じられ、合計で1450万ドルもの支払いを背負うことになった。ちなみに裁判ではTXには「数千万ドル」の売上があったものの、Bowser個人が7年で稼いだ金額は推定32万ドルだったと述べられていた。

当初Bowserには最大60ヶ月の禁固刑が求刑されていたものの、捜査に協力的な姿勢に転じたこともあり、3年と数ヶ月に減刑された。

さらに16ヶ月の公判前勾留と服役時の態度が良かったため、4月18日時点では米連邦刑務所から拘置所に移送され、カナダへの移送を待っているという。これはポッドキャスト「NickMoses05」で語られていることだ。

その服役中もBowserの賃金(日本でいう作業報奨金)は米司法省を通じて任天堂に差し押さえられており、拘留以来175ドルを支払ったそうだ。また釈放後も、最大6ヶ月の猶予期間の後、総月収の25~30%を任天堂に召し上げられる見通しだという。

Bowserは逮捕前、会計士や修理業、その他のコンサルタント業を行っていたという。また彼が家族ともに暮らす可能性が高いカナダ・トロントでの給与中央値は、2020年で8万5,500カナダドル(約860万円)である。50代前半で前科持ちのBowserが、生きているうちに任天堂への莫大な賠償金を完済できる可能性は限りなく低そうだ。

関連キーワード: