「もっと柔軟性があれば…」

アップルの機械学習トップ人材、リモートワーク方針をめぐって退職か

アップルの本社、通称Apple Park(Image:Beach Media/Shutterstock.com)

アップルは(他の多くのハイテク企業と同じく)従業員をリモートワークから職場に復帰させようとしているが、一部の従業員から強く反発されていることが何度か伝えられてきた。そうした方針の食い違いが、機械学習を率いる重要人物の退職に繋がったことが報じられている。

テックメディアThe VergeのZoe Schiffer氏は、アップルの機械学習担当ディレクターであるIan Goodfellow氏が、職場復帰の方針を巡って同社を退職したとツイートしている。同氏はGoogleに6年以上も勤務し、2019年3月にアップルに移籍した時点では「シニアスタッフ・リサーチサイエンティスト」となっていた

このGoodfellow氏は、敵対的生成ネットワーク(GAN)という人工知能アルゴリズムの生みの親として知られる人物でもある。

GANとは、1つはテキストや画像などを「作る」生成ネットワーク、もう1つは本物かどうかを「見破る」識別ネットワークとして、互いに競い合わせるもの。たとえば前者がネコの偽画像を生成し、それを後者が判別。その過程を繰り返して、「偽造者と警察」のように腕と眼力を高め合う。少ないデータ量で効率的に機械学習を鍛えられるため、ますます重要性を増している技術である。

そんな重要人物が、わずか3年でアップルを去ることになったという。同氏はスタッフへのメモの中で「もっと(職場復帰の方針に)柔軟性があれば、私のチームにとって最高のポリシーになったと強く信じている」と述べているそうだ。

アップルの従業員は新型コロナ禍のもとで2年間のリモートワークが続いた後、4月11日から職場に復帰し始めている

当初は「最低でも週に1日」とされていたが、5月2日からは週2日、23日以降は週3日の出社が求められているという

かたやGoogleは先月から一部のチームに職場への復帰を義務づけつつも、多くの社員は今後も在宅勤務を続けることが許されていると報じられていた

せっかくGoogleから引き抜いた機械学習のトップ人材を、リモートワークをめぐって柔軟性を欠いたために失ったとすれば、アップルも方針を見直さざるを得なくなるかもしれない。

関連キーワード: