悪ではなく人の命を使うために活用が期待

『ターミネーター2』が現実に?「T-1000」みたいな液体金属ロボットが開発される

Image:WANG AND PANG ET. AL.

映画『ターミネーター2』に登場する敵役のアンドロイド「T-1000」は、固体状態と液体とを自在に行き来する変身能力が主人公らを極限まで追い詰めた。そうしたボディを持つロボットが実際に開発され、ジャンプや障害物の上り下り、さらにはT-1000を彷彿させる檻からの脱出を可能にしたとの研究成果が報告されている。

柔らかい素材を使ったソフトロボットは、剛性の高いボディを持つロボットよりも可鍛性(衝撃や圧力で破壊されずに変形できる性質)に優れている反面で、固体の機械ほど強度も高くなく速い動きも苦手であり、制御することも難しい。

その弱点を補うべく、国際的な技術者チームが微小な磁性微粒子を埋め込んだ金属ガリウム製の素材を開発したことを学術誌「Matter」に発表した。

この「磁気活性相転移物質」(MPTM)は、固体の高い強度と負荷容量および高速の運動性と、液体の優れた形態適応性(伸長、分割および合体)」を組み合わせたものだという。磁場によりロボットの形や動きを制御するというアプローチだ。

米カーネギーメロン大学の機械工学教授でこの研究のシニアオーサーであるカーメル・マジディ氏は、こうした小規模で磁気により制御するロボットや機械の開発は、かなり以前から(他のグループにより)取り組まれてきたという。そんななか同氏の研究グループは、液体金属(ガリウムのような非常に低い融点を持つ金属)を使った多くの技術を開拓してきたと述べている。

今回の研究成果は、それら2つのアプローチを融合させる試みの1つとのこと。金属ガリウムの高い電気伝導性と相変化(液体と固体の状態を行き来する)能力、および磁気微粒子システムの磁気応答性という、両者の長所をブレンドする狙いだったそうだ。

金属ガリウム製ロボットの体内には磁性微粒子が体内にあるため、磁界に反応させられる。それを交番磁界(時間とともに大きさと方向が変化を繰り返す磁界)の中に置くことで動かし、さらに熱を加えて液化させることに成功したとのことだ。

交番磁界の中に金属があると、その金属には自発的に電流が発生する。その電流により金属を熱し、溶かすという仕組みだ。

この技術によりMPTMロボットは、回路をはんだ付けさせたり、自分自身を万能ネジに変形させたり、ダミーの胃から物を取り出したり、障害物コースを乗り越えることに成功したという。

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公開された動画では、液化して檻の鉄格子をすり抜け、再びロボットの形に戻っている(撮影時には手動で整形し直したとのことで、これほど綺麗に戻るわけではない)。マジディ教授は、このロボットのインスピレーションが悪の暗殺アンドロイドT-1000から得たことを明かしている。

このダイナミックな変身能力は、特に生物医学の分野で多くの可能性へと繋がりそうだ。将来的にはの臓器に薬剤を届けたり、体内の危険な物体を取り出す。あるいは固体と液体の状態を切り替えて、狭い場所や手の届きにくい場所にアクセスすることにも役立つかもしれない。

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