オーディオブックの値下がりに繋がるかも

アップル、AI生成オーディオブックを販売開始。電子書籍の変換サービスも提供

Image:FellowNeko/Shutterstock.com

電子書籍に続いてオーディオブックも増えつつあるが、十分なライブラリがあるとは言い難く、本格的な普及には至っていない。そんななか、アップルが自社の電子書籍サービス「Apple Books」にてAI生成のデジタルナレーションによるオーディオブックの提供を開始した。

アップルは昨年12月に著者向けの「Apple Books for Authors」ページにて本機能を発表していた。その内容は、Apple Booksに参加している出版社が申し込むことで、文字で書かれた本をAIによりナレーション付きの音声に変換してもらえる、というものだ。

音声のサンプルは同ページにて公開されているが、発音や抑揚、話すペースもかなり自然で、機械音声とは程遠い印象がある。アップルによれば、高度な音声合成技術と言語学者、品質管理スペシャリスト、オーディオエンジニアのチームによる緊密な連携により、電子書籍ファイルから高品質のオーディオブックを制作するという。

オーディオブックを聴く需要はますます増えている一方で、その供給は追いついているとは言いがたい。アップルはその理由を「多くの作家、特に独立系作家や小規模な出版社に所属する作家は、制作コストや複雑さのために」作成できないから、と分析している。AIによるデジタルナレーションは、「オーディオブックの制作をより身近なものとして、リスナーが楽しめる本を増やす」ことで需給のバランスを取る意図とのことだ。

とはいえ、デジタルナレーションはあくまで「プロのナレーションによるオーディオブックを補完する」位置づけとされている。さらにApple Booksでは「今後も、人の手によるナレーションの魅力をたたえ、紹介し、人力によるナレーション入りオーディオブックのカタログを増やしていく」予定と付け加えられており、「AIが人間の仕事を奪う」的な批判も考慮に入れているようだ。

デジタルボイスは、特定のジャンルごとに制作・最適化されているとのこと。今のところ利用できるのは英語のみで、ジャンルもフィクションとロマンスのみに限られている。もっとも、今後さらに追加される予定だそうである。

なお日本のブック(Apple Books)アプリでも、「AI narration」で検索すると一覧が表示され、サンプルを聴いたり購入もできる。

いつ日本語で提供されるのか、そもそも提供の予定があるのかどうか不明だが、オーディオブック制作の敷居が下がれば(さらにユーザー向けの価格も下がれば)普及の起爆剤となるのかもしれない。

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