AIモデル「ムムッ、お主、死相が出ておるぞ!」
顔写真1枚から患者の年齢やがん治療生存率を判定するAIツール

マサチューセッツ総合病院ブリガム・アンド・ウィメンズ病院の研究者らが、顔写真を見せるだけで患者の年齢を推定したり、人の健康状態を示す重要な指標を示すことが可能なAIツール「FAHR-Face」を開発した。重要な指標には、がん治療の生存率なども含まれるという。
この研究の論文執筆者のひとりで、マサチューセッツ総合病院ブライガム(Mass General Brigham)のAIM所長を務めるヒューゴ・アーツ博士は、「4200万枚以上の画像から顔の一般的な表現を学習したFAHR-Faceは、それを生物学的年齢や生存率といった様々な健康指標として適用できる」としている。要するに、患者の顔写真からさまざまな特徴を読み取り、大量のサンプル画像のなかから共通点を発見することで、年齢その他の健康指標を当てはめ、患者の健康に関する傾向を推測できるというわけだ。
アーツ博士は、「われわれの知る限り、これはAIモデルが単純な写真から直接がんの生存率を予測できることを示した初めての事例だ」とも述べている。
この研究で用いられたのはMasked Autoencoder(MAE)呼ばれる自己教師あり学習手法で、大量の顔写真で学習したAIモデルに対し、部分的に隠された顔写真を再構築させることで、顔の構造と特徴を包括的に理解することを可能にしたとのこと。
これによって、AIモデルは様々な健康評価タスクに応用可能な信頼性の高いデジタルバイオマーカーを生成できたという。
FaceAgeモデルは、既存の他の顔認識モデルよりも正確に人々の実年齢を推定し、平均誤差は5.1年だった(他のAIモデルの平均誤差は6.92年)。
研究チームはFAHR-Faceを用途別にふたつのツールに分けた。1つ目のFAHR-FaceAgeは加齢に伴う顔の生理的変化を指標として、患者の生物学的年齢を推定する。もうひとつのFAHR-FaceSurvivalは、がん患者の生存率を顔の特徴から直接予測するというものだ。

興味深いことに、FAHR-FaceAgeモデルは顔写真の人物が化粧をしていたり、メガネを掛けていたり、照明の当たり方が違ったり、さらにはフェイスリフトをしていたりといった違いには影響を受けなかった。ただ、鼻の整形手術を受けた人の画像を見たときには、わずかに判断を誤ることがあった。
それでもこのAIモデルは、人がどれだけ老化の影響をうまく回避しているか、あるいはどれだけ老化が進行しているかを判断するのに役立ちます。
たとえば、実年齢より5歳以上老けて見える患者は、志望リスクも実年齢そのままに見える患者に比べて死亡リスクが21%高いと判定された。逆に、実年齢より5歳若く見える人は、生存率が17%高かったという。
FAHR-FaceSurvivalでは基本的な顔写真の学習はFaceAgeモデルと同じながら、追加で放射線治療を受けている3万4000人以上の癌患者の顔写真、さらに約4000人と約5000人の癌患者からなる2つのグループを用いた学習を行わせた。
FAHR-FaceSurvivalは、写真から患者の生存リスクを判定するモデルの能力を検証することを目的として構築され、テストでは結果的に死亡リスクの高い患者を正確に特定することに成功したという。たとえば、最もリスクの高いカテゴリーに分類された患者の死亡率は、最もリスクの低いカテゴリーの患者と比較して3倍以上だった。
また、最もリスクの高いグループは、患者の52%が90日以内に死亡したが、最もリスクの低いグループは同じ期間にわずか2.1%の死者しか出なかったとのことだ。
これらのモデルは、同じ顔写真でもそれぞれ注目するポイントが異なる。FAHR-FaceAgeは鼻唇溝(俗に言うほうれい線)や眼窩のすぐ上の額部分、こめかみに焦点を当てるのに対し、FAHR-FaceSurvivalは目の下と鼻梁(鼻すじ)周辺の領域を評価する。
医師らは、FAHR-Faceによって将来的に顔写真1枚で治療方針の決定を支援する、手軽で低コストな方法を提供できる可能性があるとしつつ、一方でこのツールが広く使用されるようになるには、さらなる研究が必要だと述べている。
- Source: The Lancet Digital Health
- via: New Atlas
- Coverage: FaceAge
