マスク氏の法務チームから、公開すれば訴訟を起こすとも
ユニバーサル、イーロン・マスクのドキュメンタリー映画公開に及び腰。公開中止も検討か

米ユニバーサル・ピクチャーズは、2023年にイーロン・マスク氏についてのドキュメンタリー映画『Musk』の国際配給権を取得している。しかしいま、同社はこの映画の公開を取りやめることを検討している模様だ。
この映画は、今年のベネチア国際映画祭で上映されたときには、約5分にわたって拍手喝采が止まらなかったと言われるほどの好評を博した。また来月には、ロンドン映画祭でも上映が予定されている。
通常、配給権を持つ映画スタジオは、こうしたメディアの注目を集めるイベントに合わせて、その国や地域での劇場公開スケジュールを組むものだ。だが現在のところ、ユニバーサルはそうした計画を立てることができていないとされている。
米Gizmodoは、その理由について「マスク氏からの公然とした威嚇がユニバーサルを怯ませているようだ」と伝えた。マスク氏は最近、X上でこの作品に対して激しい非難を浴びせており、プロジェクトを「心理作戦(psyop)」だと呼んだり、ギブニー監督を「最低な人間」だと罵ったりしている。
さらにマスク氏の法務チームは、ギブニー監督の制作会社に書簡を送付し、映画が事実を歪曲しているとして、名誉毀損で提訴すると脅したとのことだ。
米国内では、『Musk』はインディペンデント配給会社のBleecker Streetを通じて10月に劇場公開される予定。だが、エンタメ系ニュースサイトThe Hollyywood Reporterによると、世界配給権を持つにもかかわらず、ユニバーサル社内の一部では公開見送りも検討されており、もし同社が公開を見送る場合、世界配給の権利を制作者に返還し、新たな配給会社に売却する可能性もあると伝えている。
この映画は、マスク氏が第2期トランプ政権当初に米政府効率化省(DOGE)での活動時に収集したデータを、次の米国の選挙での民主党への利用しようとしている可能性があると主張する内容とされている。さらにギブニー監督は「トランプ氏が中間選挙を歪めようと必死になっていることは、私にはかなり明白だ」「もし中間選挙を歪めようとしてAIを使いたいなら、必要なのは米国市民に関する詳細な情報を入手することだけだ。そして、DOGEが行ったことは、まさにそのために必要なことだったように見えた」と、映画の中で述べている。
もし、ユニバーサルが映画を公開しないと決めた場合、同スタジオは制作陣に「キルフィー(契約解除料)」を支払う必要があるという。また世界配給権が戻ることで、制作陣は自由に作品を再販売できるようになり、乱暴に言えば、一つの作品で2本分の権利販売利益を得ることになる。
しかし、大手映画会社が、右派の反発を避けるために正当な創作上の理由もなく、多額の代償を支払ってまでプロジェクトを棚上げにするようなことになれば、ユニバーサルは一部の人々の政治的圧力に屈したメディアとの批判を招きかねない。
これまでには米Amazonがサム・アルトマン率いるOpenAIとの提携に踏み切ったことを受け、OpenAIがChatGPTを世に送り出すまでを追う映画『Artificial』の公開から手を引いている。また米ニュースネットワークのABCとパラマウント/CBSは、トランプ政権との訴訟を和解するために、それぞれ数百万ドルを支払っている。
とはいえThe Hollywood Reporterは、もしユニバーサルが公開を取りやめる判断を下しても、この映画自体は代わりの配給会社を見つけるのに苦労しないだろうとの見解を述べている。ベネチア国際映画祭やトロント国際映画祭で話題になって以来、各国の配給会社がこの作品に注目しているとのことだ。
ちなみに、ドキュメンタリー映画監督であるアレックス・ギブニー監督は『エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか?』で2006年の第78回アカデミー賞にノミネート、続く『「闇」へ』で、第80回アカデミー賞の長編ドキュメンタリー映画賞を受賞している。
- Source: The Hollywood Reporter
- via: Gizmodo
