全体の予算は約24億円

アルファ・ケンタウリを「約8万年」かけ目指す宇宙探査計画、民間団体が発表

Munenori Taniguchi

Image:Fermi Explorer Mission

軌道データセンター開発を目指すスタートアップ企業Starcloudの創業者らが、太陽系から約4.3光年の距離にあり、地球外生命が存在する可能性も指摘されているアルファ・ケンタウリに向けて、2029年までに小型探査機の打ち上げを目指す「Fermi Explorer(フェルミ・エクスプローラー)」ミッションの計画を発表した。

この計画は、既存の技術で、可能な限り安価に恒星間旅行を実現することをコンセプトとしている。そのため、このミッション用に開発されるフェルミ・エクスプローラーは、地球上での重さが100~200kgしかない、非常に小型な探査機となる。

探査機は推進力として、電気推進方式を採用する可能性が高いとされている。電気推進システムはすでに技術が確立されており、小型探査機であれば化学推進方式よりも少ないエネルギーで長距離の航行が可能な方式だ。

また、ミッション全体にかかる費用は1500万ドル(約24億円)未満に抑えるとチームは述べている。もし計画どおりにすべてが進めば、その投資から得られる成果は相当なものになるだろう。

ただわれわれは、いや、われわれ以後何百・何千世代の人々は、この小型探査機が目的地にたどり着く瞬間を見届けることはできない。なぜなら、このミッションで探査がアルファ・ケンタウリに到着するまでには約8万年もの時間がかかるとされているからだ。

フェルミ・エクスプローラーミッションの共同ファウンダー兼社長であるフィリップ・ジョンストン氏(Starcloudの共同創業者でもある)は、AI技術企業Physical Superintelligenceを設立した物理学者のアレックス・ウィスナー=グロス氏と出会ったことで、無理難題と思われたこのミッションが実現可能だと考えるようになったと述べている。

Image:Fermi Explorer Mission

両氏はフェルミ・エクスプローラーミッションに関する諸条件をAIに入力し、技術的な実現可能性を評価する文書を作るよう指示した。するとAIは81ページにおよぶ資料を出力した。

そこには、打ち上げ後すぐにはアルファ・ケンタウリへ向かわず、最初の約12年間は太陽の周りを周回してから旅立つという斬新なプランが書かれていたのだという。

もちろん、その間ただ太陽を周回するのではない。

わかりやすく説明すると、まず最初に、フェルミ・エクスプローラーは他の人工衛星などとロケットに相乗りする格好でまずは地球低軌道に打ち上げられる。

その後、探査機は地球低軌道を離れ太陽を周回する長楕円軌道に入り、太陽に最も近づく近日点に向かって、太陽の重力で加速していく。

さらに探査機は、近日点付近でまるでブランコを漕ぐように推進力を加えてさらに加速、軌道を何度も周回しながらこの加速操作を繰り返すことで、12年後には十分な速度が得られ、アルファ・ケンタウリまで8万年弱で到達可能な速度を獲得するという。

Image:Fermi Explorer Mission

ただし、ジョンストン氏によると、ミッションチームが探査機と交信できるのは最初の約18か月間だけで、以後は探査機が自律的にアルファ・ケンタウリへ向かうことになる。

探査機が故障することなく、すべての軌道修正を計画どおりに実行できれば、約8万年後に、探査機はひょっこりとアルファ・ケンタウリ星系に姿を現すというわけだ。

ジョンストン氏は、フェルミ・エクスプローラーが「最初にアルファ・ケンタウリを目指して出発するものになり、最後にアルファ・ケンタウリに到着するものになることを目指している」と、ミッション発表の声明で述べている。

そして、「この旅が終わるとき、私たちは誰もここにはいなくなっているだろう。それが重要なことなのだ。達成可能な最初の一歩を踏み出し、将来の世代が、われわれが受け継いだ限界を乗り越えて進み続けられるように鼓舞することが重要なのだ」とした。

ちなみに、このミッションおよび探査機の名前はフェルミのパラドックスと呼ばれる地球外文明の存在に関する矛盾に由来する。

このパラドックスは近年、天の川銀河内で生命が存在する可能性のある系外惑星が数多く発見されるようになったことで、より重要性を増している。

フェルミ探査機チームによると、このパラドックスについて考えられる説明は、「人間のような知性生命が存在するのは宇宙全体でも稀なこと」「宇宙に生命が存在することは珍しいことではないが、知的な種は長くは生き残れない」「宇宙では生命の存在はよくあることで、長くも続くことだが、地球外の知性生命体は通常、自分たちの存在を別の宇宙の者たちに(自らの選択または状況によって)知らせない」の3つに絞り込めるという。

そして、「フェルミ・エクスプローラーのミッションが成功すれば、われわれは知的生命が資源を法外に消費しない方法で最寄りの星に向けて出発するのが可能であること、そしてそれを試みる(われわれのような)知的生命がほとんど存在しないという説に対して、より自信を持てるようになるだろう」とチームメンバーはこのミッションに関するFAQに記している。

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