高価なMac Studioの複数買いをアピール

新型Mac mini/Studio、異例の早期投入は予想越える「企業のAI特需」のためか

多根清史

Image:Lazy_BearShutterstock.com

アップルは例年、10〜11月に新型Macを発表してきた。ところが今年のMac miniとMac Studioに関しては、9月の新型iPhone発表イベントの直前という珍しいタイミングで、突然発表された。

テクノロジー系ニュースメディアのThe Informationは、上記2モデルが例年よりも早い時期の発表となった理由は、AI用途における両モデルの需要が急激に高まったからだと報じている。

Macが搭載するMシリーズチップは、CPUが使用するRAMとGPUが扱うVRAMをユニファイドメモリーとして統合している。このため、最大数百GBものメモリー空間にGPUが直接アクセス可能であり、RAM~VRAM間でデータのコピー処理が必要な一般的なシステムに比べて、パフォーマンス面で有利となる。

また、最近のバージョンのmacOSでは、低遅延のThunderbolt 5機能が搭載されたため、複数のMacをThunderbolt 5で結ぶことで効率的なクラスタリングが可能になった。これにより、AIワークロードや機械学習モデルをローカルで実行する環境が安価に構築できるとされる。

これらの特徴がAI研究者や企業に注目されはじめ、Mac miniやMac Studioに対する需要が高まったと考えられる。

The Informationによると、アップルは6月に「Business at the Park」と称するイベントを開催し、フォードやディズニー、Anthropicといった大手企業の幹部を招いて、Mac miniとMac Studioの企業向け製品としての展開を説明したという。また、このイベントで特にもてはやされたのがMac miniやMac Studioだったとのことだ。

アップルは今年の新型Mac miniとMac Studioを発表した際も、複数のMac Studioを連結し、大規模な最先端AIモデルを動かせる機能をアピールした。これは、一般消費者よりも企業や開発者を意識した宣伝だった。

ただ、実際に企業からの需要が高まったことは、アップルにとって想定外だったようだ。同社には、企業顧客専任のエンジニアリングチームも、開発者との関係構築に注力するスタッフもおらず、企業向けのAI戦略も欠けていたと報じられている。

たとえば、アップルに対して同社のPrivate Cloud Compute基盤へのアクセスを購入したいと申し出た企業は、あっさり断られたという。アップルは、自社でプライベートクラウド基盤を提供する代わりに、WebAIやMount Thorなど、アップル製ハードウェア上で動作するAIツールや実行環境を提供するパートナーに依存しているとされる。

AIモデルを実行するためのMac需要の増加は、世界的なメモリ不足とも重なった。その結果、Mac miniとMac Studioの多くの構成がここ数か月にわたって欠品状態となっている。The Informationによると、とくにハイエンド構成の入手が難しいことから、一部の企業顧客はNVIDIAのDGX Sparkなど、別のハードウェアに目を向けているという。

ちなみに、AIインフラストラクチャに詳しい調査会社Futurum EquitiesのShay Boloor氏は今週、OpenAIが強化学習やコンピュータ操作用AIエージェント向けに数万台の新型Mac miniおよびMac Studioを購入したとX上で伝えている。

最新のMac Studioの価格がM5 Maxモデルで約42万円から、上位のM5 Ultraモデルでは約95万円からに設定されていることからも、アップルはAI用途におけるMac Studioの主要顧客を、個人よりも企業に位置づけているようだ。

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