仕方なく別の船が救助に向かいました

ザッカーバーグの豪華ヨット、小型ボートの救助要請を無視して批判浴びる。しかしその真相は?

Munenori Taniguchi

Image : RON RAFFETY / CC BY-SA 2.0

8月3日夜(現地時間)、アラスカ沖合でMetaのマーク・ザッカーバーグ氏が所有する3億ドルの豪華絢爛なスーパーヨット「Launchpad」(全長117m)が、全長7m弱の小型ボートおよび沿岸警備隊からの救助要請を繰り返し無視した。その結果、救助を求めるボートからより遠い位置にいたクルーズ船「Wilderness Legacy」がLaunchpadを追い越して救助に向かうという一幕があった。

救助要請を行った数人乗りのボートは、当初は座礁したと報じられていたが、実際は燃料切れで航行不能の状態だった。

Wilderness Legacyに乗船していた米国のプログラマー、マイケル・ラブ氏はBlueskyへの投稿で船長が、Launchpad(とその支援船の「Wingman」)が現場により近いものの、救助要請への応答を繰り返し拒否しているため、自分たちが救助に向かうと船内にアナウンスしたと述べた。そして、「船長がこれを発表したとき、乗客のほぼ全員からブーイングが起こった」と投稿に付け加えた。

船舶の位置情報を追跡するAutomatic Identification System(AIS)の当時のデータをマップにプロットした動画を見ると、当時はLaunchpad、Wilderness Legacyともにボートのいる方向へ航行していたものの、突如Launchpadが停止し、それを追い越すようにWilderness Legacyが現地へ向かい、ボートを近くの小さな湾へ曳航している様子がわかる。

そして、Wilderness Legacyが再び湾から出てくるのを見計らったかのように、Launchpadが動き出している。

ラブ氏の投稿を見た複数の人たちは、Launchpadの行動は、救助要請を出している船があれば最も近い船舶が救助に向かう義務を負うとする国際海事規則に違反していると非難した。

ただ、国際海事規則は一般的に、船長に対しては自船や乗組員、乗客を重大な危険にさらすことなく対応できる限り「真に遭難している人々」を救助するよう求めている。この原則はSOLAS(国際海上人命安全条約)や国連海洋法条約にも反映されているが、救助要請がすべて遭難の状況を意味するとは断定していない。また沿岸警備隊は、「海上援助要請放送(MARB)」を発信することで「緊急性を要しない援助を必要とする船舶」について、付近の船舶に支援を求めることができるが、これもまた、メーデーやその他の深刻な遭難状況を指すものではない。

そのため、もしその小型ボートが遭難状態にあるとは見なされなかった場合、MARBが発せられたという事実だけでは、LaunchpadやWingmanに法的な対応義務はなかったことになる。

実際、小型ボートは当初は「座礁していた」と報じられたが、この記事の冒頭に記したとおり、燃料切れで立ち往生していただけだった。そして、現地紙Alaska Beaconによる最新の報道では、沿岸警備隊が取材に対し「午後9時56分頃、沿岸警備隊は彼らが遭難状態ではないと判断し、彼らに代わって海上支援要請の放送を行った」と述べたとされている。

Image : K I Photography / Shutterstock

さらに、Launchpadが立ち止まり、救助活動に向かうのを拒否したように見えるマップ上のデータについては、AISデータを提供するアラスカ・マリン・エクスチェンジの最高執行責任者(COO)ジョン・ホリングスワース氏が取材に対し、「我々は無線を通じて沿岸警備隊の呼びかけを支援した結果、Wilderness Legacyに連絡を取ることができ、同船が最終的に救助活動にあたってくれた」と述べた。

Image : UnCruise

同氏は「私の経験から言えば、このような状況では関係する船舶によって様々な事情が存在する。そのため、この件に関するAIS(追跡)データの一部は、その詳細のほんの一部分に過ぎない」「Wilderness Legacyは現地企業UnCruise社の船舶であり、アラスカ海域に非常に精通していることがわかっている。それが迅速に救助活動を行うことができた一因かもしれない」と語っている。

つまり、当初言われていたように、ザッカーバーグ氏所有のスーパーヨットとその支援船は、意図的に救助要請を無視したわけではない可能性も十分に考えられるわけだ。Alaska Beaconは、ザッカーバーグ氏の広報担当者からメールで送られてきた声明として「マーク氏とご家族は、事件発生当時、船には乗っていませんでした。沿岸警備隊が指摘したように、船は遭難しておらず、乗組員が自分たちが使用していた無線チャンネルとは別のチャンネルで沿岸警備隊との連絡を確認した時には、すでに救助活動が開始されていました。関係者全員が無事であったことに心から感謝しています」との言葉を伝えている。

結局のところ、もしLaunchpadがすぐに現場に向かい、率先して救助活動を行っていれば、日頃の評判があまり良くないマーク・ザッカーバーグ氏の好感度もいくらかは向上していたかもしれないが、ただザッカーバーグ氏が知らぬところで一時的に濡れ衣を着せられ、SNS上で非難されただけでこの一件は落着したと言えそうだ。

関連キーワード: