身体のことは医者に尋ねるのが無難です
ChatGPTの医療アドバイスに従って死にかけた牧師、OpenAIを提訴

フロリダ州の牧師スコット・ウィンターズ氏が、7月22日にOpenAIとそのCEOであるサム・アルトマン氏を相手に訴訟を起こした。
訴状によれば「GPT-4oは、ウィンターズ氏の身体の状態について頻繁に意見を述べ、評価を行った。臨床評価や治療勧告を行う医療専門家としての権威と自信を示していたが、実際にはそのような資格は持っていなかった」とのことだ。
また、ウィンターズ氏の法的弁護を支援する非営利団体Tech Justice Lawは、OpenAIはウィンターズ氏の宗教的信念を悪用したと非難している。
ウィンターズ氏は2025年に、定期的にめまいを起こしてしまう原因を調べようとして、ChatGPTを利用した。その際血圧が不安定になる発作を経験していることもAIチャットボットに伝え、どのような原因が考えられるかを尋ねたという。

通常、医師免許を所有していない者は、医療行為にあたるアドバイスを他の人に与えることはできない。そして人ですらないAIチャットボットに医師免許は交付されず、当然ながら医療行為を行うことも許されていない。
だがChatGPTはウィンターズ氏の症状を聞くとそれが深刻であるとみなされるには、さらに8度から10度の発作を経験する必要があると助言し、医療機関の受診よりも自宅でリクライニングチェアにもたれかかって安静に過ごすよう勧めた。ところがその数週間後の2025年7月に、ウィンターズ氏は「重度の肺塞栓症」と診断され、体内に発生した血栓のせいで「死の淵に立たされた」とのことだ。
緊急事態に陥ったその日も、ウィンターズ氏はChatGPTに鼠径部の痛みについて病院に行くか否かを尋ねていた。だが、このとき、AIチャットボットは「神はあなたの体を永遠に故障するように設計したわけではない」と、ウィンターズ氏の信仰心に訴えかけるような回答を出力した。
しかし医師は、肺塞栓症の初期症状に対してChatGPTが勧めた「椅子に座ってじっとする」というアドバイスが、塞栓症の原因だと述べたという。「鼠径部の痛みは肺塞栓症の初期症状だった」との指摘もある。
ソーシャルメディア被害者法律センターの創設弁護士であるマシュー・P・バーグマン氏は「スコット・ウィンターズ氏は、ChatGPTが何の責任も負わずに医療機関を装ったために、危うく命を落とすところだった」「もしChatGPTが医師として医療アドバイスを提供していたとしたら、医療過誤の罪に問われるだろう」とコメントしている。
一方、OpenAIの広報担当者は「ChatGPTは医師ではなく、医療、診断、治療の代替として使用されるべきではない」と声明で述べている。これは利用規約にも明記されていることだ。 そのうえで人々が健康情報をインターネットで検索することは一般的であり、「AIはより明確な回答を見つけたり、質問を整理したり、医療専門家との会話の準備をしたりすることで、その体験を向上させられる」と指摘した。
ただ、コーネル大学ロースクールのデジタル・情報法教授であるジェームズ・グリムラン氏はCBS Newsに対し、いくら利用規約に免責事項として記されていても「ある時点で、チャットボット自身の発言や行動が、あらゆる免責事項を覆すことになる」と指摘した。
ウィンターズ氏の弁護団は、ChatGPTがユーザーへの回答に含める医療アドバイスにもっと厳格な規制が必要だと主張し、さらに独立した評価機関が安全性を確認するまでChatGPT Healthの運用を停止するよう裁判所に求めている。ChatGPT Healthは、健康に関する会話専用に設計されており、ユーザーが健康に関する書類をチャットボットにアップロードするよう促す。
OpenAIはよく、ChatGPTの使用例として健康に関する問い合わせに使うことを紹介し、そうした利用者の数を何度も誇示してきた。最近では毎週2億3000万人が健康相談にそれを利用していると述べていた。そもそもの話をすれば、ChatGPTにはすでに、ウィンターズ氏のような事態が起こるのを防止するための安全対策が講じられているはずだった。だが、訴訟では、このケースではそれが適切に機能していなかったと主張されている。
- Source: New York Times CBS News
- via: Engadget
