Sashikoは「有用なツール」です

“Linuxの父”トーバルズ氏「Linuxは反AIプロジェクトではない」

Munenori Taniguchi

少し前から、オープンソースプロジェクトのいくつかでは、AIが生成した粗悪なコードが悩みの種になっている。そのためGentoo Linux、Curl、Ghosttyといったプロジェクトでは、AIモデルを使ったソースコードの貢献を制限したり、完全に禁止するなどの措置を講じるようにもなっている。

ただ、AIモデルの精度も向上しており、また利用する人々の配慮も行き届くようになったことで、AI生成コードも役立つものになりつつあるようだ。

Linuxカーネルの生みの親でカーネルへの新規ソースコード統合の最終決定権者でもあるリーナス・トーバルズ氏は、今年4月には完全にAI生成され、十分な精査を受けていないパッチがLinuxカーネルv6.15に対して提出されたことを受けて、AI生成コードへの「Assisted-by」タグの義務付けと、人的責任の厳格化によって感情的な要素を排除する対策を施した。

これはAI生成コードそのものを否定するのではなく、問題なく動作するものならそのまま受け入れる姿勢を示す対応だった。

そして今回、トーバルズ氏はLinuxカーネルのメーリングリストへの長文投稿で、「AIを嫌う人がいることは承知しているが、この点に関しては断固として反対の立場を取るつもりだ」とその考えを示した。同氏いわく「Linuxは反AIプロジェクトではない。もし誰かがそれに異議を唱えるのなら、オープンソースの原則に従いフォークする(別プロジェクトとして分岐する)か、単に出て行けばいいだけだ」と述べている。

このコメントは、Linuxカーネルパッチのコードレビューにおける「Sashiko」と呼ばれる多段階コードレビューツールの仕様についての議論の中で出された。

Image:shashiko-dev/GitHub

開発者のローラン・ピンチャート氏は、ソフトウェア・フリーダム・コンサーバンシーのAI生成コードに関するガイドラインに基づき、パッチ作成者にコメントを送る前にSashikoの出力をトリアージすることを提案した。

だがこれに対し、Sashikoを開発チームのひとりであるGoogleのロマン・グーシチン氏は、提案のようにするとツールの有用性が損なわれると指摘し、ピンチャート氏の見解はAIモデルそのものに反対するものだと述べた。

そして、グーシチン氏の意見に同意したのがトーバルズ氏だった。

トーバルズ氏自身も、以前はAI生成コードを「ゴミ」と呼び、批判的な意見を表明していた。だが、2025年の終わり頃からその考えを改め、Linuxカーネル以外のプロジェクトではGoogleのAIプログラミングツールAntigravityを使用して、いわゆる「バイブコーディング」を試してみてもいる。

トーバルズ氏は、「AIはわれわれが使う他のツールと同様に、ただのツールだ。そしてそれは、明らかに有用なツールだ。ほんの1年前までは、それほどはっきりとはしていなかったかもしれないが、今日ではもはや疑う余地もない」と明言した。そのを強調するため、同氏はSashikoが「見た者が当惑するようなバグを次々と発見する」と述べ、さらに「他の人がこれを使うことに反対するような人たちの意見は、あからさまに無視する」とも付け加え、AIツールの急速な進化を強調した。

同氏はまた、Linuxは「社会活動家」プロジェクトではなく、常に技術の向上を目指してきたプロジェクトであるとも述べ、AIツールに抵抗を示す人は自己認識が必要だとし「人間の知能も常に完璧ではない」ように、まだAIツールは完璧ではないかもしれないものの、目的に応じて十分な性能を発揮できれば良いとした。

Sashikoプロジェクトはウェブサイトで、このツールが人によってレビュー済みのコードからもバグを発見できる性能を持っていると説明している。

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