BMWイタリアの元社長に
フェラーリ、初のBEV「ルーチェ」への期待外れの反応を受けマーケティング責任者を交代

イタリアの名門高級スポーツカーメーカー、フェラーリは同社最高マーケティング・宣伝責任者をエンリコ・ガリエラ氏からBMWイタリア元社長のマッシミリアーノ・ディ・シルヴェストレ氏に交代させたことを発表した。
ガリエラ氏は、同社初の完全電気自動車(BEV)となる「ルーチェ」の発表まで、16年にわたりフェラーリに勤め、この数年間はフェラーリ最高幹部のひとりとして、同社のマーケティングと販売戦略部門を率いてきた。フェラーリCEOのベネデット・ヴィーニャ氏は「エンリコが長年にわたりフェラーリに多大な貢献をしてくれたことに感謝したい」とコメントしている。

ガリエラ氏の後任として最高マーケティング・宣伝責任者に就くディ・シルヴェストレ氏は、これまで高級車およびラグジュアリーカー業界で20年以上の経験を積み上げてきた人物だ。事業改革や商品開発に関する知識に加え、2年間のBMWイタリア社長としての経験もある。ヴィーニャCEOは同氏について「彼の国際的な経験とリーダーシップは、当社が次の成長段階へと進む上で重要な財産となるだろう」と期待を寄せている。

ロイターは、ガリエラ氏とフェラーリが、今年はじめの時点ですでに離脱を決定していたものの、フェラーリ初のBEVを発表するという重要な節目までは、ガリエラ氏がこのプロジェクトに引き続き携わることで合意していたと伝えている。
だが、ルーチェの発表はフェラーリの期待とは裏腹に、一部ファンや同社OBなどが激しい拒絶反応を示し、物議を醸すものとなった。ルーチェは元アップルのジョナサン・アイブ氏とマーク・ニューソン氏を含むデザインチームが手がけた意欲作だったが、伝統的なフェラーリのデザイン流儀からは大きく逸脱していた。

冷静な目で見てみれば、電気自動車としてのルーチェの外観はそれほど悪くはない。特にフロントノーズまわりのデザインは独創的であり、フェラーリ初の5人乗り車両として快適な居住空間も確保している。卵形をしたボディシェルに、ボディパネルを被せる構造を採用しているのも特徴的だ。どことなく、マーク・ニューソン氏が27年前にコンセプトカーとしてデザインした「フォード 021C」的な雰囲気もある。

ただ、それがフェラーリの名を冠するクルマに求められるものだったかは賛否が(否の方向に大きく)分かれるところだ。
ルーチェが、アップルの自動運転EVとして発表されていれば、世間の反応はまったく異なっていたかもしれない。あるいはヒョンデあたりが平均的なEVの性能をもつ新型モデルだとして発表していれば、普通に話題になっていた可能性はありそうだ。
もし、ルーチェがフェラーリらしい乗り味、走り心地を継承していれば、まだ世間の評価は良くなる可能性はある。だがフェラーリは発表会当日も、自動車ジャーナリストらがこのクルマを試乗する機会を提供しなかったため、これまでのところ汚名を返上するチャンスを逃してしまっている(少なくともフェラーリF1チームのドライバー、ルイス・ハミルトンとチャールズ・ルクレールには好評だったようだ)。
ヴィーニャCEOは、ルーチェは既存・新規両方の顧客から「強い関心」を得ており、受注も「順調に伸びている」と主張している。フェラーリの会長であるジョン・エルカン氏は発表時、「変化への対応として電気自動車に移行するのではない。次の時代をリードするという決断を下した」のだと述べた。
ちなみに、ドバイのカーチューナーVenuumは、ルーチェのデザインを伝統的なスポーツカー風にするボディキットをTelegramで公開した。そんなものを取り付けるぐらいならフェラーリの他のモデルを買えば済むではないかとも思えるが、フェラーリをポンと買えるような富裕層なら、ボディキットのひとつやふたつケチることもないのだろう。ただ、Venuumのキットを装着したルーチェは、フェラーリというよりはダッジ・チャージャーSRTヘルキャットのようだ。

