火星の有人探査に向けたデータ収集をします

NASA、Google元CEOのRelativity Spaceと火星周回探査ミッションで提携

Munenori Taniguchi

Image:Relativity Space

6月17日、NASAは「Interplanetary Sciences Program(惑星間科学プログラム)」を発表し、元Google CEOのエリック・シュミット氏が2025年買収してCEOを務めるRelativity Spaceと提携して同社が開発する火星周回探査機を2028年に打ち上げる計画を発表した。

Relativity Spaceによると、このプログラムは産学およびNASAその他支援団体が連携して、科学的研究を支援するための「基盤となる技術やペイロードの開発・運用」込みで計画される科学ミッションを支援し「科学的発見の能力を高め、より身近なものにする次世代の惑星間探査能力を構築することで、コストに対する科学的成果を飛躍的に向上させる取り組み」だという。

このプログラムでRelativity Spaceが開発するのは「Aeolus」と名付けられた火星大気観測機器群を搭載する火星周回探査機で、具体的にはドップラー式風速・気温センサー、熱リムサウンダー、地表放射測定センサー、広角カメラなどを搭載、これら科学機器を使って1火星年にわたって火星の大気の観測データを収集し、それを科学成果に変換するためのソフトウェアを開発する予定だ。

また、この探査機は「膨大な」データストレージと「サーバークラスの演算能力」も備え、人工知能モデルを動かして自律的な運用にその能力を活用できるという。さらに通信設備として地球との高帯域幅のレーザーや無線周波数接続を提供し、火星表面の探査機らとの無線周波数通信も提供する。

さらに浅層レーダーで、火星表面近くの氷や地質をマッピングし、気候や地質史、そして価値の高い着陸地点を発見することも計画されている。なお、火星周回探査機は、Relativity Spaceの再利用型ロケット『Terran R』を使用して打ち上げる予定となっている。

Image:Relativity Space

NASAのジャレッド・アイザックマン長官は、「NASAの世界トップクラスの観測機器と、民間企業のイノベーションや投資を組み合わせることで、より多くの科学成果をより頻繁に提供し、将来の火星有人ミッションに備える研究者たちに不可欠なデータを届けるまでの時間を短縮可能になる」と発表にコメントを寄せた。

一方、Relativity Spaceのエリック・シュミットCEOは、同社のビジョンについて「宇宙へのアクセスをよりオープンで信頼性が高く、日常的なものにし、地球を超えた科学とイノベーションを推進すること」だと説明している。

そして同氏は、「惑星間科学プログラムは、軌道投入に向けた規模と速度を重視して設計された当社の再利用型ロケット『Terran R』をベースとして構築され、そのビジョンの実現に向けた自然な一歩となる。これらのプログラムが相まって、宇宙における商業、科学、国家安全保障の各ミッションにおいて、実現可能な範囲を拡大していくことになるだろう」と述べている。

Image:Relativity Space

Relativity Spaceもアイザックマン氏も、火星周回探査機のミッションについては軽く説明したものの、「惑星間科学プログラム」において、このミッション以外、たとえば将来的な探査計画、計画そのものの全体像などについては「太陽系全域でデータを収集する」ということ以外はほとんど述べていない。

いずれにせよ「Aeolus」は、同社の惑星間科学プログラムにおける将来のミッションに向けた概念実証の役割を果たすことになる。

ちなみに、シュミット氏がRelativity Spaceの経営を引き継ぐ前、同社は別の民間宇宙企業であるInpulse Spaceによる火星探査ミッションを計画・推進していた。

Relativity SpaceとInpulse Spaceは2022年に『Terran R』ロケットでInpulse製の火星着陸機を打ち上げるミッションの計画を発表している。当時の計画では、両社は早ければ2026年にもこのミッションを打ち上げるとしていたが、その後いずれの企業からも、この計画に関する情報は発信されていない。

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