【連載】山本敦の発見!TECH最前線 第11回
色鮮やかに“書ける”Kindleで思考する習慣を。Amazon担当者に聞くデバイスの魅力
Amazonの電子書籍リーダー「Kindle」シリーズに、コンテンツを「読む」だけでなく、専用のスタイラスペンで「書く」こともできるモデルがあることをご存じだろうか。
「書けるKindle」は既に第3世代に入り、今回新しくカラー表示にも対応する「Kindle Scribe Colorsoft」が誕生した。本機は他社のデジタルペーパーを採用するタブレット型デバイスと何が違うのだろうか。そして、いま誰が「買うべきデバイス」なのか。
アマゾンジャパン合同会社にて、Kindle製品を担当する後藤喜章氏と髙杉紗里氏にインタビューした。

3世代目のKindle Scribe。ユーザー層を広げたい
「読み・書き」しながら「思考を深める」ことができる、初代のKindle Scribeは2022年に発売された。以降、本機にはビジネスパーソンや学術研究者を中心に支持を集めていると、後藤氏はシリーズのユーザー像を語る。
最新モデルのKindle Scribe Colorsoftは、カラー表示に対応しただけでなく、画面がより大きな11インチになった。ディスプレイ周辺のベゼル(縁)が左右均等幅になり、デザインも洗練された印象を筆者は受けた。第2世代までのKindle Scribeを活用してきたユーザーも、大いに食指が動くはずだ。
「Kindleストアという電子書籍リーダのためのコンテンツサービスの基盤を有しているところ」が、他社の電子ペーパーを採用するタブレット型デバイスに対するKindle Scribeの強みなのだと、後藤氏と髙杉氏は語る。
本を読み、そこからインスピレーションを得て、自ら考えを書くという循環を生み出せることが、Kindle Scribeシリーズのコンセプトの中核にある。本体が約400gと軽量であることから、PCと一緒にバッグに収納して、様々な場所に持ち出しやすい。「デジタル文具」としても、多くのユーザーに愛用されている。新製品についても、髙杉氏は「持ち歩きながら1日中使えるところが魅力」なのだと呼びかける。

筆者は、Kindle Scribeシリーズが学校などの教育現場にも相応しいデバイスだと考えている。ところが、学校や企業などでの一括導入については、Kindleストアなどのプラットフォームがユーザー個人のAmazonアカウントに紐づく仕様となっている。
そのため、現状では1台のデバイスを複数人で共用する使い方に向かない。学校等の場合、教員が1つの幹となるアカウントに、複数端末の枝カウントを紐づけて管理できる仕組みが整えば、課題は解決できそうだ。
あるいは、アマゾンジャパンには2019年に、JALがハワイの国際線を利用する旅行者向けに「Kindle Paperwhite」を貸し出すサービスを実施した経験がある。貸し出す端末のログイン・ログアウト、またはリセットの手順を明快に、かつ簡単にできる仕組みが整えば、より多くの人がKindle Scribeシリーズの魅力に触れることができると思う。
心地よい「書き味」を一貫追求してきた
筆者は発売の前後に、新しいKindle Scribe Colorsoftを試用する機会を得た。シリーズの魅力である「書き味」がさらに洗練されている。この点はアマゾンの後藤氏が「開発において特に重視したポイント」だと振り返っている。

最新のOxideディスプレイを採用し、表面には独自のテクスチャ加工を施すことで、専用のスタイラスペンで書いたときに適度な摩擦感が得られる。そのバランスは、本当に紙に鉛筆やボールペンなどの筆記具を使って書いているようだ。
さらに、ペン先とディスプレイの描画層との距離を極限まで縮めることで視差をなくした。その詳細は明かされていないが、最新のチップセットを搭載したことで、書き味だけでなく、メニューを選択した時の応答速度などが向上している。約40%向上したという「ページめくり」のスピード感も上々だ。

Kindle Scribe Colorsoftから搭載された2つの新機能は、いずれも筆者にとって仕事の生産性を高めてくれるものだった。
ひとつはホーム画面に常設される「クイックメモ」。タップすると、シンプルな罫線の入った白紙のノートが開く。従来は簡単なメモをとりたい時にも、逐次ノートのテンプレートを選んで新規に作成する手順が必要だった。クイックメモがあれば、即座に書き始められるのがいい。
もうひとつはクラウド連携の機能だ。筆者はGoogleドライブにKindle Scribe Colorsoftのライブラリを接続して使った。
Kindleで原稿の草稿を手書きしてGoogleドライブに保存したり、反対にインタビューの文字起こしの記録をGoogleドライブに保存した後、Kindleで開いて移動中に内容を読みながら大事な箇所にマーカーを入れたりといった、日常の作業がスムーズにできる。

米国で先行するAI機能とは
Kindle Scribe Colorsoftには、アメリカで先行導入された生成AIアシスタント「Amazon Alexa+」と連携する機能もある。
Alexa+と連携して実現するいくつかの機能の中に、ユーザーがペンで手書きしたテキストをデジタルテキストに変換(OCR)し、その内容についてAlexa+に質問したり、要約を生成したりといったユニークな使い方がある。
筆者も2025年にAmazonがアメリカで実施した新製品発表会で、Kindle Scribe Colorsoftに手書きで文字を書きながら、Alexa+とチャットを交わして「旅行の計画」を立てるデモンストレーションを体験した。

もしこの機能が日本語環境にも導入されれば、Kindle Scribeの役割は情報を筆記して記録するツールから、思考を整理し拡張するためのアイデアノートとして、今までに類を見ない新しいデバイスになる。
また、ユーザーが書き留めた「アイデアの断片」を、AIが整理してドキュメントとして出力可能なレベルまで練り上げるといった使い方も可能になるだろう。
Amazonは過去、Kindle Scribeシリーズにおいて、継続的な機能追加を行ってきた実績がある。例えばファームウェアの更新により、なげなわ選択ツールや日本語テキストをデジタルフォントに変換するOCR機能、ノートブックのサブフォルダ管理といった新機能が挙げられる。
今後のアップデート方針について、後藤氏は「現時点では提供をお約束はできるものではありませんが、過去の実績を踏まえながら、私たちは発売後にもKindle Scribe Colorsoftの使い勝手をますます良くしていきたいと考えています」と語る。

ラインナップを広げて幅広くニーズをカバーする
Kindle Scribe Colorsoftは、第2世代のKindle Scribeよりも価格が大きく上昇している。理由はまずカラー対応のE Inkディスプレイの部品そのものが高価であることが考えられるが、後藤氏は、代わりにハードウェアの総合的な進化を果たしていることも理由として強調している。
「軽量化や大画面化を図り、処理速度も上がっています。そこにカラー化が加わったということで、我々としてはその値段アップに見合った快適な使い心地を提供できる自信があります」
需要の拡大に合わせてフロントライト非搭載のモノクロモデルも併売し、選択肢を確保しているが、カラー表示による視認性の向上はデータ確認や思考整理において実用的な利点となる。ただ、筆者はやはりこれから購入するのであれば、カラー対応のKindle Scribe Colorsoftの方が賢い選択だと思う。

Kindle Scribe Colorsoftは「デジタルで思考を構築し、切り拓くためのツール」だ。インターネットに常時繋がるスマートフォンやタブレットと違い、通話の着信やアプリの通知に煩わされることもなく、読むことと書くことに「集中」できる魅力がある。カラー化されたことで、思考の整理がより直感的にできる。
後藤氏は「私見ですが、今から数十年後には多くの方がKindle Scribeシリーズのような電子ペーパーデバイスで読み、書いて、考えるようになっていると思う」と語った。私もそう思うし、むしろもっと早くそのような時代がくるのではないかと、Kindle Scribe Colorsoftを試しながら実感した。
