自然言語が魔法の呪文になる

Apple Intelligenceで進化する「ショートカット」、現地で体験した“究極の自動化ツール”に驚愕

草刈和人

アップル製デバイスの真のポテンシャルを引き出す最強のツール、それが「ショートカット」アプリだ。ガジェット好きの読者のなかには、日々の面倒な作業をワンタップで終わらせるために、複雑なアクションをパズルのように組み合わせ、自分だけの自動化環境を築いてきた人も多いだろう。

ただ、正直に言おう。ショートカットアプリは、iPhoneやMacといったアップル製品を使い慣れた人でなければ、そもそも使いこなすのが難しいアプリだ。そういう人が腰を据えて向き合ったとしても、「使い方がよく分からない」「思ったように動かない」「トラブルが多い」と、ハードルの高さに何度もつまずく。

WWDC26のイベント会場で体験した、ショートカットアプリの新機能デモンストレー本を中心にレポートする

僕自身、いくつかオートメーションを組んできたが、作るたびに「便利なのは分かる、でも面倒だ」と感じ、なかば消極的な気持ちで何とか形にしてきた。同じような人は、決して少なくないはずだ。

そんな積年のモヤモヤを、今年のWWDC26で発表されたアップデートが根本から吹き飛ばした。次世代のApple Intelligenceが統合されたことで、僕たちが日常的に使う「言葉」そのものが、ショートカットを生み出す “魔法の呪文” になったのだ。本記事では、ショートカット愛好家であり、アップル本社の体験会で実機を触ってみて思わず唸った、次世代ショートカットアプリの進化をお届けする。

「言葉で説明するだけ」でショートカットが自動生成される

最大の目玉は、新機能「ショートカットを説明」(Describe a Shortcut)だ。

これまで新しいショートカットを作るには、どのアクションを使い、どの変数をどう渡すかを考えながら一つずつ構築する必要があった。しかし今後は、やりたいことを自然言語でテキスト入力するだけでいい。Apple Intelligenceが言葉の意図を汲み取り、複数のアプリをまたいだ必要なアクションを自動で組み立ててくれる。

友達に話すように、自然な言葉で文章を入力することで、理想のショートカットが作成できる

たとえば「キーボードを接続したら、ウインドウモードをオンにしてSafariとメモを並べて表示して」とiPadの作業環境構築を頼んだり、「仕事場を出るとき、妻に到着予定時刻を添えて『今から帰る』とメッセージを送って」と退勤ルーティンを任せたりできる。指示を入力して実行ボタンを押すと、オンデバイスのAIモデルやPrivate Cloud Computeが推論を行い、見事にショートカットが完成する。

ここが本当にすごい。実際に現場で、僕は意地悪なくらいトリッキーな指示をいくつも投げてみたが、解釈ミスもストレスもなく、作りたかったものをサクッと組み上げてくれた。初代ベータという状態でここまで仕上がっているのかと、画面を眺めながら舌を巻いた。

「もうちょっとこうして」、追加の微調整もチャット感覚で

一度生成したショートカットの微調整も、かつてないほど簡単だ。

たとえば「今日の会議の予定と、今日中に終わらせるべきタスクを抽出して」というショートカットを作ったとする。テスト実行した後に「出力結果を箇条書きにして見出しをつけて」「もっと楽しいトーンの文章にして」と自然言語で追記するだけで、AIが構造を賢くアップデートしてくれる。

一度作ったショートカットの編集も今までに比べて格段に簡単になった

「やっぱりMagic Keyboardを接続したときに実行するようにして」と、トリガー(オートメーションの条件)の変更まで言葉で指示できる。プログラミングの知識は一切いらない。まるで優秀なアシスタントと会話しながらツールを磨いていくような体験だ。

より高度な自動化に応える、新トリガーが登場

進化はAIによる生成だけではない。自動化の要となるオートメーションのトリガー(実行条件)にも、ガジェット好きに嬉しい条件が複数追加されている。

たとえば、スクリーンショットを撮影したときには、撮った瞬間に画像を特定のフォルダへ保存したり、テキストを抽出してメモへ送ったりするフローがシームレスに組める。特定のアプリを開いたとき・閉じたときには、「YouTubeを開いたら画面の向きのロックを解除し、閉じたら再びロックする」といった、地味だが便利な自動化が設定できる。

細かく指示する必要はなく、ざっくりとした説明でも理解してくれるように感じた

また、Apple Homeで自宅のデバイスを連携しておくことで、特定のアプリから通知を受け取ったときに、「フードデリバリーから『到着しました』と通知が来たら玄関の電気を点ける」「インターホンで知らせる」といった、通知内容に応じた高度な自動化が可能になる。

さらに、Apple Pencilのスクイーズ(握る)操作には、任意のショートカットを割り当てられる。どれも「かゆいところに手が届く」絶妙な条件ばかりで、アイデア次第で生活のハックがいくらでも捗る。

共有と同期の進化、もう再設定の手間はいらない

自慢のショートカットができたら、友達にシェアしたくなるのがギークの性(さが)だ。

これまではショートカット自体は共有できても、「毎朝9時に実行する」といったオートメーションの条件は、受け取った側が各自で設定し直す必要があった。しかし今回から、オートメーションの設定そのものがショートカットに組み込まれ、デバイス間や友人間で同期・共有できるようになる。

時間指定のオートメーションの自動化は、スマートホーム関連で力を発揮することが期待できる

友人にシェアすれば、相手は面倒な設定なしにすぐ使い始められる。相手の環境(カレンダーやメールなど)に合わせて調整したい場合も、前述の「ショートカットを説明」を使えば言葉で簡単に直せる。

アップルの目指す「寄り添うAI」がようやく着地

アップルの考えるAIは、チャットボットに何かを投げて処理してもらうというより、生活に寄り添い、日々を便利に、効率的にすることを大切にしている印象がある。その思想において、ショートカットアプリはこれまで最も遠い存在だった。便利なのに、ハードルが高すぎて多くの人が挫折してきたからだ。

それが今回、自然言語で「何を作りたいか」を伝えるだけで形になるようになった。iPhoneは年々多機能化し、できることが増え続けているが、その能力を使いこなせていない人は多いだろう。

「毎回これをやっているから、自動でやってくれたらいいのに」と思いつつ、やり方が分からず諦めてきた人もたくさんいるはずだ。その「ちょっとできたらいいな」を、新しいショートカットは片っ端から実現してくれる。これがとにかく熱い。

アップル製品を使っている中で感じる「ちょっとした不便」が確実に解消される予感がする

正直、僕はこの瞬間をずっと待っていた。昨年のApple Intelligence発表の時点で、バイブコーディングの認知も広がりつつあっただけに、「これこそショートカットに実装すべきだ」と思っていた。意外にも見送られて拍子抜けしたが、今年ついに満を持して載ってきた。もう最高としか言いようがない。

すべてのユーザーが自動化を使いこなせる日へ

今年のショートカットのアップデートは、単なる機能追加ではない。「AIにやりたいことを伝えるだけ」という分かりやすい操作を手に入れたことで、これまで自動化を敬遠してきたライトユーザーをも巻き込む、大きなゲームチェンジャーになるだろう。

もちろんテックやガジェットに詳しい人なら、これを使い倒してあらゆる効率化を実現できる。だが本当にすごいのは、普通の人がショートカットアプリを開き「こういうのをやってほしい」と話しかけるだけで、きっと形になってしまう点だ。そんなポテンシャルを秘めているのが、新しいショートカットアプリだと思う。

そして、僕たちのようなショートカット好きにとっては、思いついたアイデアをその場ですぐ形にでき、こだわりのトリガーで日々の操作を細かく自動化できる環境がついに整ったことを意味している。秋のリリースが、今から待ちきれない。

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