月のクレーターにある水氷を確保せよ
月面自動車「ペガサス」は、月の地形や寒暖差をものともせず、自律走行もする

NASAは将来的に月面に建設する基地が数百万平方マイルの広さになると主張している。そんなに広大な基地を月面に管制させるのがいつ頃になるのかは、今は想像できないが、それが実現するのなら、端から端まですぐに行き来できる機動性が必要になるはずだ。また、月面基地での生活には、人々が生活するために水が必要になる。
NASAはそのときのため、飛行士が乗って移動する次世代の月面ローバー開発提案を民間企業に募り、2社を選定した。そのうちの1社、Lunar Outpostが開発するのが「Pegasus(ペガサス)」だ。
ペガサスは「アポロ計画では不可能だった方法で、月面における人類の活動範囲と期間を拡大するだろう」とLunar Outpostの共同創業者兼CTOのAJ・ジェマー氏はNew Atlasのインタビューで語っている。
大気がほとんどない月面では日中と夜間、日向と日陰で激しい温度変化に曝される。NASAと月面探査車サービス(LTVS)契約を結んだLunar OutpostとAstrolabは、それぞれ2億2000万ドルと2億1900万ドルの予算を授与され、より早期に、より低コストで納入可能な月面ローバーの開発を進める。
Lunar Outpostは、NASAの要求に応えるため、GMCハマーEVを参考に開発を進めていた月面対応車両(Lunar Terrain Vehicle:LTV)のEagle(イーグル)を、デジタルツイン技術を活用して改良し、GMやタイヤメーカーのグッドイヤー、総合技術企業のLeidosらとの協力により、コンパクトなLTVに仕立てる。
ウェブサイトの説明では、ペガサスは「高度な電力管理、自動運転、最先端の通信・航法システムに加え、過酷な環境下での運用技術を備えた究極の月面移動車両になる。これにより、宇宙飛行士と車両の安全を確保し、次のミッションに備えつつ、科学データの収集や実験を行うことが可能になる」と記されている。

ペガサスとイーグルの性能は、1970年代にアポロ15号、16号、17号の3つのミッションで合計56.2マイル(90.4km)を走行した月面車「Lunar Roving Vehicle(LRV)」を遙かに超えたものになる。具体的にはLRVの100倍の航続距離を持ち、少なくとも1年間は月面で稼働可能だという。
NASAは、次世代月面ローバーに対し、月の南極付近にあるクレーター内の永久に日の当たらない環境で稼働する能力を求めている。その場所は、水氷が豊富に埋まっている可能性があると考えられており、最も温度が低いところでマイナス246℃にもなる。一方で地表では121℃にまで温度が上昇するため、水を採取するためのロジスティクスが大きな課題となる。
こうした温度差に対応するため、ペガサスは月の南極の険しく起伏の多い地形を、自律走行、宇宙飛行士による操縦、または地球から送信される遠隔操作コマンドによって走行し、「アポロ計画では不可能だった方法で、月面における人類の活動範囲と期間を拡大する」という。また、ペガサスが備える熱管理システムは、宇宙飛行士が運転している時でも、常に自律的に動作するように設計されているという。
NASAは、Lunar Outpostが2027年11月までに要件を完全に満たしたペガサスLTVの納入を求めている。納期が守られれば、ペガサスはBlue Originが準備するBlue Moon月着陸機に搭載され、月面に送り込まれる予定だ。
ジェマー氏は、ペガサスLTVが「月探査を短期的な探査から、恒久的なアメリカの月面基地を建設するために必要な持続的な運用へと移行させる上で重要な役割を果たす」と述べている。
この計画は、NASAが水の氷を確保し、月面に永続的な拠点を築けるかどうかを左右する可能性がある。そして将来的に人類がさらに火星を含む深宇宙へ進出するための足がかりを築くことにもつながると考えられる。
- Source: Lunar Outpost
- via: New Atlas
