「フェラーリらしさ」は気にしない

フェラーリ初のBEV「ルーチェ」全貌が明らかに。元アップルのジョナサン・アイブがデザイン

Munenori Taniguchi

Image:Ferrari

フェラーリは、同社初のバッテリー式電気自動車(BEV)である「Luce(ルーチェ)」のエクステリアを発表した。同モデルは2022年に「Elettorica(エレットリカ)」の名で開発発表後、昨年10月にスペック公開、今年2月にインテリア公開と段階的に発表を重ねており、今回の発表でその全貌が明らかになった。

おそらく、ほとんどの人が抱いた率直な感想は「フェラーリっぽくない」というものだろう。だがこのクルマをデザインしたのが、元アップルのデザイン責任者だったジョナサン・アイブと、Apple Watchのデザインにも携わったプロダクトデザイナーのマーク・ニューソンのデザイン会社「LoveFrom」だと言われれば、ある程度は納得できるかもしれない。

生みの親が誰であれ、ルーチェは同社の「専門性と卓越性の本拠地」であるマラネロで設計、開発、生産を行う、正真正銘のフェラーリだと主張している。

Image:Ferrari

そして、その意気込みは、同社がアルファロメオから独立後「フェラーリの名を冠した最初のモデル」であるフェラーリ125Sが、イタリア・カラカラ浴場サーキットで行われた1947年5月25日にローマGPで初のレース優勝を遂げてからちょうど75周年のこの日に、ローマで発表を行ったことからもうかがえる。

Image:Ferrari

フェラーリ初のBEVは、独特の甲高いサウンドで人々を魅了してきたエンジンを搭載しない初めてのフェラーリとも言える。

だが、同社は「フェラーリ・ルーチェは、マラネロのブランドの専門知識をさらに拡大し、パフォーマンス、エンゲージメント、そして汎用性を兼ね備えるというマラネロのDNAに合致した新たなセグメントを切り開く」モデルだと述べている。

ルーチェという名前も明快さと方向性を象徴してつけられている。単なる「電動フェラーリ」ではなく、より深い没入感とパフォーマンスを追求し、独自の個性と認識可能なキャラクターを備えた、全く新しいフェラーリ像を創造するという意図が込められているという。

フェラーリ・ルーチェは同社初の5人乗り車両であり、4枚のドアは左右で(まるでマツダ・RX-8のように)観音開き式に開閉する。

Image:Ferrari

独特なのは、車体が黒いガラスシェルで構築され、ボディとフロントおよびリアのエアロダイナミックウイングがそれを覆うように構成されているところだ。一見するとシンプルなようだが、これによって走行時の気流は一部がガラスシェルとウィングの間を通過する。高速走行時にはフロントを約10mm下げるライドハイト制御を行うことで、同社史上最も低いCd値(空気抵抗係数)を実現しているとのことだ。

Image:Ferrari

また、フロント下部のアクティブグリルがラジエーター吸気口の開閉を制御し、冷却が不要な場合には空気抵抗を低減する。熱効率はソフトウェアによって制御され、冷却、エネルギー消費、航続距離の最適なバランスを実現するという。

ルーチェの車体の下には、韓国SK Onと共同開発したセルをマラネロで組み上げた122kWhのバッテリーパックが専用シャシーに搭載される。モーターはF80由来で独立制御される同期モーター4基を搭載し、リア2基で620kW、フロント2基で210kWの合計830kWを出力する。

走行性能としては、0-100km/h加速が2.5秒、最高速度は310km/h、航続距離は530km以上をうたう。充電は800V、最大350kW急速充電が可能となっている。

Image:Ferrari

BEVの弱点は、重いバッテリーのために車体重量がかさんでしまうところだが、ルーチェは車体からスチールを極力排し、リサイクルアルミ合金で構築して、全体の重さを2260kgに抑えた。

さらに、サイドスリップコントロール、ホイール毎に独立のトルクベクタリング、アクティブサスペンション制御、四輪操舵システムなどの恩恵により、フェラーリいわく実際の重量よりも400kg軽い自動車と同等のハンドリング特性を実現したとのことだ。

フェラーリのジョン・エルカン会長は、「フェラーリは変化への対応として電気自動車に移行するのではなく、未来をリードするという決断を下した」と述べ、ルーチェをフェラーリ初のBEVではなく、フェラーリが思い描く、フェラーリそのものとして開発したことを強調した。

実際、ルーチェには車両技術的には特に目新しいものはないかもしれないが、F80や先ごろ世界耐久選手権(WEC)で優勝を果たしたフェラーリ499Pや、同社のアイデンティティであるF1からの技術も盛り込まれており、60件以上の新規特許も含まれているという。

Image:Ferrari

なお、ルーチェには独自開発のモバイルアプリも用意され、空調や充電の設定を行ったり、車両位置、車両ステータスを確認したりすることが可能だ。

ルーチェを実際に購入できるのは、かなりの富裕層であることは間違いない。フェラーリの生産能力的にも、このクルマは自動車業界を電動化へ加速させるものにはならないだろう。それでも、フェラーリが「未来をリードする」ために、BEVを開発したということは、大きな意味を持つことになりそうだ。

関連キーワード: