PS5でPS3公式エミュが実現しなかった理由

PS5でPS3ゲームはどこまで動く? 検証で見えたCELLプロセッサーの「異常な強力さ」

多根清史

Image:pisaphotography/Shutterstock.com

PS5上でLinuxを動かし、PS3エミュレータ「RPCS3」を用いてPS3タイトルの動作検証を行った結果を、ビデオゲーム映像分析の専門家集団Digital Foundryが報告している。その内容は、PS3とPS5のハードウェア特性の違いを浮き彫りにする、非常に興味深いものとなっている。

今回の検証はもちろんソニー公式の互換機能ではなく、エクスプロイト(脆弱性)が塞がれていない古いファームウェアのPS5を使用したものだ。様々なツールや高度な知識を必要とするものの、ハードウェア本体の改造は不要な、いわゆるソフトモッドとなる。

具体的には、M.2スロットへ増設したSSDにLinuxをインストールし、Protonなどの翻訳レイヤーを介さず、オープンソースのグラフィックスドライバー「RADV」を使用。RPCS3をLinuxネイティブアプリケーションとして実行している。

実機のPS3は、Cellプロセッサー、特にSPU(超高効率なサブコア)の演算能力が非常に強力だった。その一方で、GPU性能がボトルネックになりがちな構造だった。

しかし、PS5によるエミュレーションでは、これが逆転している。GPUパワーは2006年当時から見れば “神がかったレベル” で余裕があるものの、カスタム版Zen 2アーキテクチャのCPUは、CellのSPUを多用するタイトルのエミュレーション処理ではボトルネックになりやすいというジレンマが浮き彫りになっている。

初期のPS3タイトルの動作は非常に良好だ。たとえば『リッジレーサー7』は4K/60FPSで安定動作している。一方、『レジスタンス』も4K出力に到達したものの、フレームペーシング(描画間隔)にはやや不安定さが見られる。

『ヘブンリーソード』は、最も顕著な向上が確認されたタイトルの1つである。PS3実機では720pでも30FPSを大きく下回る場面が多かったのに対し、PS5上では5120×2880(オリジナル比で画素数16倍)という超解像度でも、ほぼ30FPSへ張り付くという劇的な進化を見せている。

一方、『MotorStorm』シリーズと『Killzone』シリーズでは結果が分かれた。前者はシリーズ3作品とも比較的良好に動作しており、初代『MotorStorm』は約1440p/30FPS、続く『MotorStorm: Pacific Rift』は4K/30FPSで、いずれも安定したパフォーマンスを示す。『MotorStorm: Apocalypse』も、MLAA(マルチサンプル・アンチエイリアシング)を無効化することで、オリジナル版の30FPSターゲットに近い挙動を見せている。

対して『Killzone 2』は、アニメーションやAI、ポストプロセッシング処理でCellのSPUを酷使する設計のため、PS5上でも苦戦している。一方、『Killzone 3』はRPCS3側のパッチによってMLAA(マルチサンプル・アンチエイリアシング)を無効化することで、PS3実機に近い30FPS前後へ到達している。

さらに、『GTA IV』や『Metal Gear Solid 4』といったPS3後期タイトルでは、GPU性能ではなくCPU、すなわちSPUエミュレーション側が主なボトルネックとなり、フレームレートが大きく落ち込んでいる。実際、出力解像度を4Kへ引き上げてもパフォーマンスへの影響がほとんど見られなかったことから、GPUではなくCPU側が限界に達している証拠とされている。

こうした結果を踏まえると、PS5世代のハードウェアだけで幅広いPS3タイトルを公式エミュレーションでカバーするのは、技術的なハードルが高いことがあらためて示唆されたと言える。一方で、次世代のPS6世代ではCPU性能が大幅に向上するとみられており、「過去のPS3タイトルが公式に動作する未来」が実現するかどうか、非常に興味深いところだ。

関連キーワード: