機能が劣ることも「プライバシー保護のため」と言い訳可能に

アップル新Siri、チャット履歴の自動削除に対応か。「プライバシー重視」を前面に

多根清史

Image:Kaspars Grinvalds/Shutterstock.com

アップルはiOS 27に搭載する初の単体「Siriアプリ」に、チャット履歴の自動削除設定を用意する予定だとBloombergが報じている。

新たなSiriは、従来の音声アシスタントから、ChatGPTやGeminiのようなチャットボット型へ移行すると何度か報じられてきた。そのUIは、チャットの吹き出しやテキスト入力欄を備え、過去の会話履歴をリストまたはグリッド形式で表示するなど、一般的なチャットボットアプリに近いものになるとされている。

アップルの内情に詳しいMark Gurman記者によると、この単体Siriアプリには、「メッセージ」アプリのような「チャットを自動削除する機能」が導入されるという。ユーザーは会話履歴の保存期間を「30日」「1年」「無期限」から選択可能になるとのことだ。

さらに、Siriが「以前の会話の文脈を引き継ぐ」か、「毎回まっさらな新規チャットとして開始する」かを切り替えるオプションも提供されると付け加えられている。

しかし、チャット履歴の自動削除には深刻な欠点も伴う。ほとんどのLLM(大規模言語モデル)は、能力向上や応答のパーソナライズ精度を高めるため、会話から可能な限り多くの個人データを取り込もうとするからだ。

一方でGurman氏によると、アップルはAI学習において、より抑制的なアプローチを採っており、生のユーザーデータではなく合成データ生成を利用しているという。結果として、競合他社のAIより機能面で見劣りする恐れもある。が、その一方でアップルは、「ユーザーのプライバシーを守るための代償である」と位置づけることで、その弱点を巧みに覆い隠せるというわけだ。

アップルには、ユーザーのプライバシーを優先してきた長い歴史がある。一方で、歴史の浅いAIチャットボット業界では、すでに企業側が犯罪捜査や訴訟向けにチャット履歴を提供した事例も出ている。

一部競合は、ChatGPT の「Temporary Chat」機能のようなシークレットモードを提供している。が、Gurman氏によれば、アップルの立場は、「こうした保護機能は、ユーザーが手動で有効化するオプションではなく、システムそのものに組み込まれているべき」というものだという。

新しいSiriは、6月8日に開幕する WWDC 2026で、長らく待たれていた正式発表を迎えると見られている。2024年のWWDCで示された「よりパーソナルで文脈理解が強化されたSiri」構想から、およそ2年遅れとなる格好だ。

特に問題視されたのは、アップルが「Available Now(今すぐ利用可能)」に近い印象を与える形で広告展開していた点である。米国では、この件を巡って集団訴訟が提起された。そして2026年5月、同社は約2億5000万ドル規模の和解に合意している

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