アルファ・ケンタウリは太陽系から約4.3光年の位置にあります

光を動力源とする推進システム「メタジェット」、アルファ・ケンタウリに20年で行ける可能性

Munenori Taniguchi

Image:Love Employee/Shutterstock.com

テキサスA&M大学の研究者らは、何かの接触がなくとも微小な物体を持ち上げ、方向も制御できるレーザー駆動推進システムを実証した。この技術は将来的に、宇宙船を太陽系近隣の恒星系へ約20年程度で到達させる推進力に応用できるかもしれない。

光推進の概念自体は新しいものではない。科学者たちは1世紀以上前から、光が圧力を及ぼす現象、いわゆる光圧(放射圧)を理解してきた。この光圧推進の原理は、すでに様々な形で実証されている。たとえば、NASAとJAXAはそれぞれ、太陽光を利用して穏やかで持続的な推力を得るソーラーセイル宇宙船の試験飛行を行っている。

しかし、光推進における大きな課題の一つは、発生する運動を制御できないところだ。物体を前方に押し出すことと、それを安定させ、正確に操縦し、複数の方向に自在に操縦できるようにすることは、全く別の問題なのだ。

そしてこのことは、極めて高速で航行する将来の光帆船にとって、特に重要なこととなる。高速移動すればするほどまた目的地が遠ければ遠いほど、わずかな不安定性でも、宇宙船は本来向かっていたのとは違う方角へ直行してしまうことになりかねない。

今回研究チームが開発したのは、マイクロメートル(μm)レベルの小ささながら、レーザー光を照射すると動く特殊な設計のデバイスだ。入射光との相互作用を制御することで、複数の方向への動きを制御することが可能で、チームはこれをメタジェット(metajet)と呼んでいる。

一般的なロケットやスラスターには燃料を使用するが、このシステムは光子が運動量を伝える特性を利用する。メタジェットは光の挙動を精密に制御可能なナノスケール構造でパターン化された極薄材料「メタサーフェス」で構成される。これはレンズの形状を設計するのと似ているが、それよりもはるかに小さく、より精密なスケールで実現されるものだ。

研究チームはこれらの構造を綿密に設計することで、光が物体に運動量を伝達する仕組みを制御し、物体を動かすことに成功した。

レーザー光が物体の表面で反射するとき、その物体には光によって押し出されるような微小な力が生じる。研究者たちは、この効果を卓球のボールが跳ね返る様子に例えて説明している。多数の光子が繰り返し衝突することで、最終的にその物体には測定可能な推力が生まれるそうだ。

研究チームはさらに、メタサーフェスの形状を綿密に設計することで、デバイスを3次元的に動かし、上昇、旋回、操縦を可能にした。そして、光推進システムではこれまで実現されていなかった、完全な三次元操縦性も実現。研究チームは、過去にこの種のアプローチを用いた三次元操縦の実証はなく、これが初めてだと主張している。

光そのものを操作して物体を制御する従来の方法とは異なり、このアプローチでは、材料自体が制御機能を備える。より柔軟に力を生み出すことが可能となり、スケールアップもしやすいと考えられる。発生する力はデバイスの大きさではなく光の出力に依存するため、同原理はより大きなシステムでも応用できる可能性があるとのことだ。

現在のロケット技術では、最も近い恒星系であるアルファ・ケンタウリに宇宙船を送り込むのに数十万年かかると考えられている。しかし今回の研究は、光を利用した推進システムによって、その旅を約20年に短縮できる可能性を示している。

研究者らは現在、地球の重力の制約を受けない微小重力環境でのレーザー推進の検証に向けた資金を求めている。そして検証結果次第では、この技術は最終的に小型機械、軌道システム、深宇宙探査機などが大量の燃料を必要とせずに宇宙を移動することを可能にするかもしれない。

非接触で物体を移動させる技術は、宇宙飛行以外でも精密製造技術やマイクロロボット工学、高度なセンシングシステムなどへの応用が期待される。

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