ブルーノ・マーズ側とは話もしていませんでした

サム・アルトマンの生体認証企業、ブルーノ・マーズのチケット販売と発表もアーティスト側が全否定。実は「マーズ違い」

Munenori Taniguchi

Image:Brian Friedman/Shutterstock.com

サム・アルトマン氏はOpenAI以外にもいくつか企業を経営しているが、そのなかのひとつである生体認証技術企業Tools For Humanity(のWorldプロジェクト)が先週、同社の「Concert Kit」と称する生体認証ツールの発表に合わせて、人気アーティスト、ブルーノ・マーズのワールドツアーのチケット販売を手がけると発表した。

ところが、ブルーノ・マーズのマネジメントとチケットエージェンシーのLive Nationは、この発表を受け即座に声明を出した。同アーティストのワールドツアーとTools For Humanityは全くの無関係であり、同社から「接触を受けたことも、提携やツアーへの参加について話し合いをしたこともない」と主張した。

この食い違いは、どうやらTools For Humanityの最高製品責任者であるティアゴ・サダ氏の、社内イベントでの発言が発端だったようだ。

サダ氏は、4月17日にサンフランシスコで開催された同社のイベントにおいて、同社の「認証済みユーザー」向けに「VIP体験」を提供するため、ブルーノ・マーズの『ロマンティック・ツアー』に参加すると述べた。そしてこの発言はその後、同社ウェブサイトのConcert Kitを発表するブログ記事に掲載された。

このサダ氏の発言が誤りであることにTools For Humanityが気づく前に、ブルーノ・マーズ側に伝わったせいで、コトが大きくなってしまった模様だ。

Tools For Humanityは、指摘を受けてウェブページ上の誤情報を修正した。そして同社の広報担当者は「Concert Kitのテストや紹介に関してブルーノ・マーズといかなる契約も結んでいない」こと、また「アーティスト本人やワールドツアーとは一切関係がない」ことを認めた。

では、サダ氏はなぜブルーノ・マーズに言及したのだろうか。

今回の件はサム・アルトマン氏がスカーレット・ヨハンソンにChatGPTのAI音声「Sky」のボイス提供を打診して2度も断られたにもかかわらず、映画『her / 世界でひとつの彼女』でヨハンソンが演じたAI音声に酷似した別の声を採用したうえ、Xに「her」とひとこと投稿することで、その声があの映画の彼女であるとほのめかすキモムーブをかましてヨハンソンから訴えられた件とは異なり、相手側に打診すらしていない。

同社は今回の誤りの原因について説明していないが、修正されたウェブページには、Tools For HumanityのConcert Kitが、LAのロックバンド、Thirty Seconds to Marsの2027年ヨーロッパツアーに関する提携を結んだと記されている。

マーズ、マーズ、マーズ、Maーズ、Mars…。ハッ?! どうやら、サダ氏はThirty Seconds to Marsの「Mars」から、アーティスト名をブルーノ・マーズと取り違えたのかもしれない。そして、Tools For Humanityはサダ氏の発言をきちんと確認せずに、ウェブページに掲載したのかもしれない。

もしそうだとすれば、本人確認システムを主力商品のひとつとするTools For Humanityにとっては、皮肉な結果というほかない。

ちなみに、ブルーノ・マーズではないほうのThirty Seconds to Marsは1998年結成で、現在も活動を続けているベテランロックバンドであり、映画俳優のジャレッド・レトとその兄シャノン・レトが創設メンバーだ。ジャレッド・レトはスカーレット・ヨハンソンと一時交際していたが、それは今回の件には関係ない。

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