人工衛星の費用は保険でカバーされます
Blue OriginのNew Glennロケット、人工衛星を間違った軌道に投入してしまう痛恨のミス

米Amazonの共同創業者ジェフ・ベゾス氏の宇宙企業Blue Originは、4月19日に3度目の軌道への打ち上げに成功し、また1段目ロケットの回収にも成功した。
しかし、このロケット上段に搭載されていたAST SpaceMobileの通信衛星「BlueBird 7」は無事にロケットから分離はしたものの、なぜか予定よりも低い軌道に投入してしまったことが判明した。
New Glennの上段は、2回の噴射を実施した後、BlueBird 7を高度約460kmに投入する予定だった。約6トンの重量があるこの衛星は、2400平方フィートの通信アレイアンテナを展開し、すでに6基が展開されて試験中のAST社の携帯電話ブロードバンドネットワークに合流する予定だった。

分離後のBlueBird 7は正常に電源も投入されたが、衛星に搭載されているスラスターを使用しても「運用を維持できない」と判断され、現在の軌道から離脱させて大気圏に再突入させることとなった。
AST SpaceMobileによれば、衛星が失われたことによる損害は保険によってカバーされるとのこと。また同社は年内に45基の衛星を打ち上げることを計画しており、今後1か月以内にも複数のBlueBird衛星が完成する予定だ。
Blue Originにとっては、顧客ペイロードの軌道投入は今回が2度目だった。そしてこのミスは、同社にとって初めての大きな失敗だ。
同社は、NASAのアルテミス計画における月探査およびそれ以遠への有人探査ミッションの主要打ち上げプロバイダーの1つとなることを目指している。現政権は現大統領の2期目の任期が終わるまでに、月面着陸機を着陸させ、その後人類を再び月面に到達させるべく、同社とSpaceXに圧力をかけている状況だ。
NG-3と名付けられた今回の打ち上げミッションは、前回のNG-2ミッションで初めて回収に成功した1段目ブースターを再利用して行われた。

このブースターの機体はNG-2と同じもので、エンジンだけが新型にアップデートされたものだ。そして、少なくとも25回の飛行を想定して設計されているというNew Glennロケットの1段目ブースターが初の再利用に成功し、また回収にも成功したことは、大きな進歩と言えるだろう。ブースターの再利用能力があれば、同社はSpaceXのFalcon 9/Falcon Heavyなど、現在までに再利用性が実証されている軌道投入可能なロケットと競合できることになる。
New Glenn担当副社長のジョーダン・チャールズ氏は、技術者たちがロケット底部に沿った熱保護システムを改修し、再突入時の熱にうまく対処できるように改良したと述べている。

またBlue Originは、今回のミッションのためにブースターの誘導システムにも手を入れており、「実際に大気圏に再突入する仕組みに関していくつか微調整を加え、ロケット内部についても、すべてのシステムが期待通りに機能し続けることを確認した」とチャールズ氏は述べている。
SpaceXはNASAの有人月着陸船開発において第一候補であり、アルテミス3号ミッションで宇宙飛行士を月面に送り込む予定だったStarshipは有人月着陸船の主力候補だった。
しかし現在は、Starshipの開発遅れとアルテミス3号ミッションの内容変更により、Blue OriginのBlue Moon宇宙船が再び脚光を浴びつつある。
Blue Origin関係者は今回の打ち上げ後、同社の無人着陸機「Mk.I Blue Moon」が夏の終わり頃までに月に向けて打ち上げられる予定だと述べた。同機は最近、NASAジョンソン宇宙センターで環境試験を完了しており、最終調整のためケープカナベラルにあるBlue Originのロケットパーク施設に戻されている。
今回の衛星の軌道投入失敗の原因となった高度不足が、再利用された1段目ブースターの問題によるものなのか否かはまだ不明だが、今回のNew Glennロケット打ち上げで起こった問題が、今後の開発スケジュールなどにどのような影響を及ぼすかはまだわからない。願わくば、アルテミス計画の月面ミッションにまで影響を及ぼさないことを願うばかりだ。
ちなみに、上で述べたアルテミス3号ミッション内容の変更によって、NASAは同ミッションでの有人月面着陸をアルテミス4号に先延ばし(ただし、その時期は早まる)し、3号ミッションでは地球周回軌道で、オリオン宇宙船と月着陸船とのランデブー飛行およびドッキングの訓練経験を飛行士に積ませたいと考えている。
これにはSpaceXまたはBlue Originのいずれか、あるいは両方の月着陸船が必要になる。また両着陸船は、宇宙飛行士を搭乗させるための認証をNASAから得る前に、軌道上での極低温燃料移送や無人月面着陸など一連の資格要件を満たし、技術実証することが求められている。
- Source: Blue Origin
- via: Space.com TechCrunch
